〜Rin Side〜


教会の一室。

私と桜は、セイバーの付き添いとして控え室に残っていた。

ライダーはカレンの手伝いを頼まれてどこかに行ってしまった。

椅子に腰掛け、壁の時計と何度か睨めっこを繰り返すセイバー。

彼女の体を覆うのは、純白のウェディングドレス。

私と桜、そしてアーチャーがあちこちを駆けずり回って仕立てた一品。

本来ならば服のラインを体に沿わせたり腰で締めたりするんだけども、

今のセイバーの体型にあわせて、少しゆったりとした作りになっている。

それを着たセイバーはとても綺麗で、神聖で、幸せそうで。

なぜだか、話しかけるのすら躊躇われるくらいに似合っていた―――。



































Mother,Father,Lover,and Married Knight

   第11話      by楓野









「……随分、遅れているようですね」

何度目かの時計との睨めっこの後、何気なく呟いたセイバー。

それをスイッチにしたかのように、部屋の中の空気が緩む。

「寝坊の影響が響いているんじゃない?」

「カレンさんまで寝坊してたみたいですから……」

「まったく、誰か変な魔術でも使ったんじゃないかってくらいに寝坊してたわね」

そう、本日寝坊したのは私達だけではない。

この結婚式に出席する者全員が寝坊していた。

理由は不明。

さっき私が言った魔術の可能性はない、キャスターのお墨付きだ。

単に全員浮かれていただけ、とか言ったら嫌過ぎだけど。

「……アーチャーどうしてるかしらね」

「きっと、一部の隙もなく衣装を着こなして優雅に時間を待っていることでしょう」

暇つぶし代わりの私の呟きに、セイバーはうっとりと陶酔するような声で返してきた。

頭の中では美化120%くらいのアーチャーが椅子に腰掛けているに違いない。

ラブラブねー。

「むしろ私には気になることがあるのですが」

「何ですか?」

唐突に表情を厳しくしたセイバーの言葉に、桜が首を傾げる。

「……ギルガメッシュです」

「……ああ」

「……なるほど」

セイバーが重々しく呟いた名前に、二人して納得する私と桜。

招待する義理も義務もないが、式に乗り込まれては一大事と判断し、

前もって招待したのはいいのだが……。

「アレが大人しくしてるとは到底思えないものねぇ……」

やれやれ、と溜息をつく。

「空気は読まない、都合は気にしない、話は聞かない。ないないばっかでキリがないじゃないの」

「ええ。いかに財があろうとアレではついていく気になりません」

「私もちょっとギルガメッシュさんは……」

桜にまで否定される金ぴか。

まあ女運云々以前に本人に致命的な問題があるからどうしようもないんだけど。

「一応ランサーに頼んではおいたけど……」

「微妙な所ですね」

別にランサーが頼りないと言っている訳ではないけれど……

正直、あの金バカは何をやらかすか予想が付かない。

下手をすれば教会が宝具の雨で吹っ飛ぶ可能性すらある。

「……警戒しとくべきかしら」

誰に言うでもなくそう呟いた瞬間。

『フハハハハハハハハ!!』

聞き覚えのある高笑いとともに、部屋の中の空間が歪みだす。

「……来たわね」

「……来ましたね」

「……来ましたか」

うんざりと呟く私、桜、セイバー。

さて、どんな奇行をやらかしてくれるものか……

『十年前―――我はとある女に心を奪われた』

渦を巻く空間の向こうから、なんか語りだす金バカ。

しかもなんか長そう。

『我の心を奪っておきながらその女は消え去ってしまった―――』

ウザい。

卒業式の来賓の話以上にウザい。

『それから十年間―――我は待ち続けた。

  心を焦がしながら、再び合える日を待ち続けた』

ついつい欠伸がでてしまう。

隣では桜が手持ち無沙汰に窓の外を見つめている。

『そして今―――我はこの思いを告げる!』

シュパッ!と、歪んでいた空間が開く。

『とぅっ!!』

掛け声ともに、開いた空間から人影が飛び出す。

部屋の唯一の出口であるドアの前に着地した人影――金バカが口を開く。


『セイバー、我のものになれ!!』


その声が聞こえてきたと同時に。

































『キャーーーーーーーー!!!!!』

































私と桜は、同時に悲鳴を上げていた。

なぜなら。

飛び出てきた人影が、まごうことなき全裸であったからだ。

その体には至る所に鎖が巻きつき、その鎖が一番ヤバい部分を上手く隠している。

「我とともに、この愛の鎖で絡み合おうではないか……」

なにやらキモいセリフと共に、自分に酔いまくっている。

てゆーかなんで全裸?

もはやわけが判らない。

「さあ、セイバー!!貴様も脱ぐがよい!!愛の前に服など無粋!!」

「くたばれ変態!!」

反射的にガンドを放つ。

が、何時になく華麗な動きでそれを回避する金バカ。

「フ……我の美麗な肉体に動揺したか」

「こっち来ないでくださいーーーー!!!!」

一歩踏み出した金バカに、桜が手近な椅子を投げつける。

だが、それすらもあっさりとかわされ、空しく床を打ち鳴らす。

「今日は随分とお転婆のようだな、雑種の娘よ」

さらに陶酔を深くしながら、また一歩踏み出す。

さっきのガンドのときもそうだが、金バカは陶酔して目を閉じたまま。

つまり、私たちの攻撃をまったく見もせずにかわしているのだ。

「くっ……妙なモードに入ってるのか、異常に強いわね……」

油断スキルが発動してないし。

「ね、姉さん……」

桜が不安そうに私に視線を送る。

ちら、と背後のセイバーを見ると、武装化したくともドレスがあるので困り果てているようだった。

ドレスを脱いだのでは金バカに裸をさらすことになる。

それでは無意味、セイバーが脱ぐことは私たちにとって負けに等しい。

どうすれば……どうすればいいの……!?

ライダーが戻ってきてくれれば何とかなるかもしれないけど望みは薄いし……。

思考を巡らせ、どうにか目の前の変態を追い返せないかと思考する。

その瞬間。

































「おおおおおおおおおおお!!」


ドドドドドドドドド!!



物凄い絶叫と足音が聞こえてきたかと思うと、



「セイバァァァァァァァァァァ!!!!!!」


ドガァ!!!

































ドアを本当に吹き飛ばし、アーチャーが部屋に飛び込んできたのであった。

その体勢たるや、まさにライダーキック。

かの初代仮面騎乗戦士の必殺技と今も伝えられる究極の蹴り技の一つであった。

「ぬ……シーユーレイター、我」

吹っ飛んできたドアをまともに食らった金バカもとい変態は、その場にバッタリと倒れ伏す。

なんかつい先日も見たような光景だが、それはそれ。

「無事か、セイバー!!」

「アーチャー!私は無事です!!」

「おお……」

倒れ伏した変態をズカズカと踏みつけながらセイバーに歩み寄るアーチャー。

変態がうめき声を上げるのを無視し、セイバーをその腕に抱きしめる。

「綺麗だ……セイバー。そのドレス、君によく似合っている」

「アーチャー、貴方の方こそとても凛々しい……似合っています」

セイバーに関しては同意見だが、アーチャーに関しては否定したい。

地黒と白スーツがミスマッチになり、笑い出しそうなほど似合ってない。

セイバーの手前、必死にこらえてはいるがとにかく面白い。

お互いほめ合いながら、そのままイチャコラし始める二人。

それをボケーっと見つめていると。


「おーい、ギルこなかったか?」


士郎とランサーが、ひょっこりと顔を出した。

「……来たわよ。そこに転がってるでしょ?」

まだ床に倒れたままの変態を指差す。

「……全裸?」

「おい嬢ちゃん、剥くのはやりすぎだろ」

「違うわよ!!出てきたらもう脱いでたのよ!!」

大体こんなの脱がしたくない、てゆーか触りたくもない。

「しっかし……なんていうか……」

「アホ、ここに極まれり……か?」

呆れたように言いながら、士郎とランサーは金バカを見下ろしてたたずむ。

ランサーが靴先で脇腹を突付くと、ビクッビクッ!と反応する。

これがまたこの上なくキモい動きで、見てると何か汚染されそうな気さえする。

「……で、どうすんのコレ?」

「あー?まあそこの王の財宝にでも放り込んどきゃ問題ねぇだろ」

そう言うとランサーは金バカの腕を無造作につかんで持ち上げると、

未だ閉じていなかった空間の歪みに文字通り放り込んだ。

「これでよし、と」

一仕事終わり、とばかりにパンパンとランサーが手をはたく。

それを合図としたかのように、

「失礼します」

と言ってカレンが姿を現した。

本来ならノックすべきなのだろうが、ノックするべきドアはアーチャーがぶち破ってしまっている。

……修理代請求されたらバックレよう、うん。

「カレン?どうしたの?」

「準備が終わりました。式を始めたいと思いますので、

  列席者の方は礼拝堂までお越しくださいますよう」

そう言うと、スッと一礼して去っていくカレン。

「いよいよか……アーチャー、しっかりね!」

「セイバー、固くならないようにな」

「セイバーさん、頑張ってください!」

「おいコピーバカ、本番でトチるなよ?」

セイバーとアーチャーに思い思いに言葉をかけて、私達は礼拝堂へと向かう。

本日を持って、セイバー・アーチャー両名は夫婦となる。

主よ、この二人に祝福を……なんてね。



さぁ、全力で二人を祝福するとしますか―――!







あとがき


なんかもはや週一更新?

最初セイバー一人称だったはずかいつのまにか凛の語りに。

動かしやすい……貴重な人材だ。

そして再びギルガメッシュ暴走(笑)。

なんかもうふぁて張のギルに近くなってきたような気がする……

次回は……さすがに暴走できんだろ、多分w


次回いよいよほぼシリアスな式本番。

作者は式を書けるのか(笑)!?





それでは、次回もヘイヘイ♪とヨロシク!!



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