〜Sirou Side〜


ゆっくりと、皆が礼拝堂に集まりつつあった。

本来なら席順は決まっているんだけど、今回に限っては自由だ。

皆、思い思いの席についてゆく。

俺達は一応セイバー・アーチャーの家族ということで、一番前の席に陣取った。

そして最後―――たった今到着したバーサーカーとセラ、リズが席に着いたとき。

司祭代行、カレンがゆっくりと祭壇についた。

そして深々と一礼し―――



















神聖な儀式が―――始まる。



































Mother,Father,Lover,and Married Knight

   第12話      by楓野









「新郎、新婦の入堂です。列席者の方々は御起立願います」

カレンの声にあわせて、皆が立ち上がる。

皆(除く未だに気絶している一人)が立ち上がると、教会の扉が重々しく開いてゆく。

ちなみに、扉を開いているのは藤村組の人達だったりする。

セイバーが結婚すると聞いて、我も我もと手伝いを申し出、

教会に人手がなかったこともあり、この役目をお願いしたのであった。

開ききった扉から、アーチャーとセイバーが足並みをそろえ、ゆっくりと歩いて来る。

純白のドレスに身を包み、ヴェールで顔を覆ったセイバー。

それをエスコートするのは、あれだけ大笑いされた白のタキシードをキッチリ着こなしたアーチャー。

二人の歩みはよどみなく、決して止まることなく祭壇へと向かう。

祭壇前、カレンの目前で二人が立ち止まる。

背筋を伸ばし、真っ直ぐにカレンを見据える。

「……ここに、セイバー・アーチャー両名が夫婦となる誓いの儀の開祭を宣言します。

  お二人とも、本日はまことにおめでとうございます」

カレンが開祭の挨拶を述べ。

「聖歌、斉唱。御手元の楽譜にご注目ください」

そう言って、カレンはオルガンへと歩いてゆく。

鍵盤に手を沿え、聖なる歌が礼拝堂に響き始める。

そして俺達は、声をそろえて歌いだした。



あいのみちかいの つゆたがわねば

みめぐみのあめの ふるもまぢかし

みめぐみのあめよ かれののくさの

いろなきこのみに ふりかかりてよ


すくいぬしイエスの くだしたまえば

はるのあめよりも のどかにぞあらん

みめぐみのあめよ かれののくさの

いろなきこのみに ふりかかりてよ



伴奏が終わりを告げる。

カレンはまた祭壇へと戻ると指を組み、

「この良き日に、大いなる父の祝福がありますよう」

と、祈りの言葉を口にした。

「それでは、これより誓約の儀を行います。新郎新婦、両手を前に」

カレンのその言葉に従い、アーチャーが左手を、セイバーが右手を前に出す。

前に出したその手は重ねられ、聖書の上へと置かれた。

「では、誓いの言葉を」

その言葉をきっかけに、二人が息を吸い込み声を発する。

『今日、我ら二人は、ここにいる皆を証人として夫婦となる。

  互いに支え合い、助け合い、そして、励ましあい。

  互いを信じ、決して裏切らないことを、

  そしてたとえ二人が分かたれようとも愛し続けることを、ここに誓います』

高音と低音、まるでコーラスの二重唱のように息の合った誓いの言葉が終わりを告げる。

それが終わると、ゆっくりと二人の手が聖書から下ろされた。

「その言葉に嘘偽りはありませんね?」

カレンの静かな声に、二人は力強くうなずいた。

「……この結婚に異議のある方は、御起立を」

カレンが、結婚への同意を尋ねる。

無論、異議のある者などいようはずもない―――いや一人だけいるのだが。

全出席者の視線がギルガメッシュに集まる。

たった一人異議があるであろう男、ギルガメッシュは、

未だに気絶したまま椅子に腰を下ろして天を仰いでいる。

しかも念のため、ランサーとライダーがいつでも押さえられるように両脇でスタンバイしている。

が、ギルガメッシュは気絶したまま動かない。

それを確認したカレンが口を開く。

「異議のないものと認めます。

  彼らの誓いは今ここに成立いたしました」

……いいのか?

いやまあギルガメッシュに暴れられても困るけど……。

そんな思いも露知らず、カレンはまた口を開く。

「夫婦となった二人の間に隔てるものはありません。

  ヴェールを上げ、誓いの口付けを」

言われ、二人は向き合う。

神聖なものに触れるような手つきでセイバーのヴェールに手をかけたアーチャーは、

それを優しく後ろへとかき上げた。

二人の間を隔てていたヴェールはふわりと舞い、セイバーの顔が露わになる。

そのセイバーの肩に手をかけ、アーチャーはゆっくりとセイバーに口付けた。

瞬間、聖堂のあちこちから微かに感嘆の溜息が聞こえた。

祭壇の前の二人は、そのまま動かない。

写真に撮ったらきっと一枚の絵画のようだと思われる光景。

……自画自賛かもしれないな。

アーチャーが唇を離すと、二人は少しだけ顔を赤らめた。

「それでは、愛と誓いの印たる指輪の交換を」

そう言うと、カレンは祭壇においてあった指輪の箱を開け、

その中に収められた、二つの指輪のうち一つを手に取る。

「まずは、新郎から」

手に持った指輪をアーチャーに手渡す。

アーチャーがセイバーの左手を取り、その薬指に滑らかに指輪をはめ込んだ。

「次に、新婦」

カレンがセイバーの手に指輪を渡す。

セイバーはアーチャーの手を取ると、緊張のせいか少しギクシャクした動きでアーチャーの薬指に指輪を嵌めた。

それを見届けたカレンが、瞳を閉じ、胸の前で手を組んだ。

「万物の造り主である父よ」

その口から、朗々と祈りの言葉が紡ぎ出される。


「あなたはご自分にかたどって人を造り、夫婦の愛を祝福してくださいました。

  今日誓いを交わした2人の上に、満ちあふれる祝福を注いでください。

  2人が愛に生き、健やかなる子に恵まれますように。

  喜びにつけ悲しみにつけ信頼と感謝を忘れず、互いに支えあい万事に励み、

  困難にあっては慰めを見いだすことができますように。

  多くの友に恵まれ、誓いがもたらす恵みによって成長し、

  実り豊かな生活を送ることができますように。

  ――――Amen」


祈りが終わり、カレンは瞳を開いた。

「以上をもちまして、セイバー・アーチャー両名の誓いの儀を終了いたします」

十字を切ったカレンが、静かに閉祭の宣言をする。

セイバーとアーチャーは、お互い穏やかに微笑んでいる。

「新郎・新婦の退堂です。皆様、拍手でお見送りください」

その言葉をスイッチとしたかのように、聖堂の中に拍手が鳴り響く。

決して多くはない、だけど祝福に溢れた音の洪水。

その洪水の中を、本日の主役たる二人が腕を組んで歩いていく。

藤村組の若い衆さん達が聖堂の扉を開く。

その一歩前で、二人は立ち止まり、回れ右してこちらを向く。


「皆、ありがとうございます!!

  私たち二人は、なにがあろうと貴方達の祝福を忘れない!!」


満面の笑顔を浮かべて、セイバーがよく通る声で言った。

その後を、アーチャーが継ぐ。


「だが、堅苦しいのはここまでだ!!

  さあ、これから後は楽しく愉快に騒ごうじゃないか!!」


まるであどけない少年のような笑みを浮かべながら、アーチャーが大声で言う。

「先に行って待っているぞ!!」

そう言い残し、二人は手を取りあって光の向こうへと駆け出した。

光に向かう二人の構図は、何故かどこかで見たことがあるような気がして。

―――だけど、明らかに違うものだと思った。

「よっしゃぁ!!全員移動だ!!

  騒ぐぜぇえええええええええええええぇ!!!!!」

立ち上がったランサーの大音声の絶叫に、


『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』


聖堂が、揺れた。



かくして、神聖な儀式は終わりを告げ。

何よりもめでたい宴が始まる。

この日祝わずして何時祝う。

ならば祝おう。

祝酒を飲み干し、祝物を並べ、祝言を叫び、祝の歌を高らかに唄い。

全身全霊で、この幸せが何時までも続くように。

俺達にできる最高の祝の宴を開こうか―――!!







あとがき


スゲェ難しかった……

結婚式に関しては、神前式と人前式が中途半端に混ざってます。

そもそも本来は司祭がやる役目をカレンがやってますし。

物凄いご都合主義だ……。

結婚式次第についてはツッコまないでいただけるとありがたいです。

教会での結婚式には二回ほど出席しましたが(どっちも従姉)、覚えてないもんだな……。

聖歌・祈りの言葉共にネットで探して、祈りの言葉は大分アレンジしました。

キリスト教徒の人とか見たら怒られるかなぁ……ビクビク


あと、最後の方の『光に向かう二人の構図』に対しての士郎の独白。

一応、アーチャーの『ついてこれるか――?』のシーンを意識してるんですがわかりづらいですかね。


次回は披露宴代わりの自宅での大宴会。

もはやちらっとだけでもいいから全キャラ出すくらいの勢いでゴー!!





それでは、次回もモシャリとヨロシク!!



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