「……で。式をどうするかなのよね」

セイバーとアーチャーの婚約から一夜明けた日曜の昼。

遠坂は、まだ眠そうな目でそう言った。

ライダーと桜は二人でなにやら買い物に出かけたし、

イリヤは藤ねえに話があるといって藤村組へ。

家にいるのは、俺とセイバーと遠坂、そして幽霊の親父。

「式?」

言いつつお茶を汲んで、遠坂に差し出す。

ついでに俺のも淹れるか。

「そうよ。和式か洋式か。どこでやるかとか、衣装をどうするかとか。

  披露宴はどうするかとか、誰を呼ぶかとか、考えることは山積みよ?」

そう言う遠坂の目の前には、山と詰まれた結婚関連の雑誌。

「……けっこうするわね、やっぱり」

むぅ、と唸る遠坂。

机の上で開かれた雑誌を覗き込むと、天文学的な数字が踊っていた。

「……高いな」

「ま、基本的には一生に一度の晴れ舞台だしね。

  張り込もうと思うのも無理はないわよ」

とは言ってもなぁ……。

親父の遺産(今は財産か?)があるにしても、さすがに出費としてはでかい。

セイバーの式だし、俺としても張り込みたい所ではあるんだけど――



































Mother,Father,Lover,and Married Knight

   第6話      by楓野








「というわけなんだけど、どうだろう?」

「どうだろうと言われましても」

セイバーの自室にて、俺は先程遠坂と話していたことを尋ねてみた。

やはりこういうことは当人達の意見が一番だし。

「そもそも私はこの国の冠婚葬祭には疎いのでなんとも……」

「……となるとアーチャーも交えて、か」

でもアイツ今仕事なんだよなぁ。

帰ってくるまで待つしかないのかな。

「おや?ダメだよ士郎、人妻に手を出しちゃ」

「しないって」

大体まだ人妻じゃないだろ。

心の中でツッコミを入れながら振り向くと、そこには昨日幽霊として復活したばかりの親父の姿。

真っ昼間だというのに平気な顔して、ふらふらと宙を漂いながら部屋に入ってくる。

「で、なんの相談だい?」

「ああ、実はセイバーの式のことで……」

さっきセイバーに話した事を、再び説明する。

そして説明が終わると、親父は腕組みをしながら、

「うーん、確かに結婚式ってのは値が張るからねえ」

と、ちょっと困った笑顔で言ったのだった。

「セイバーとしてはどうなんだい?」

「そう言われましても……」

「漠然としたイメージでもいいよ。豪華なのがいいとか、質素なのがいいとか」

「……あまり装飾華美は好ましくありません。

  できれば、あまり格式ばらないような形式であればいいと思うのですが」

親父の問いに、セイバーはちょっと考えてから、答えた。

「となると、ホテルとかは却下と」

「その方がいいだろうね。   お腹の子もいることだし、なにかと融通の利く場所がいいんじゃないかな」

「あるのか?そんなとこ」

親父と二人で必死に頭を捻っていると、

「……あの、二人とも。

  この家でやるというわけにはいかないのでしょうか?」

と、セイバーが言い出した。

「この……」

「……家で?」

「はい」

セイバー、大真面目。

でもなぁ。

「呼ぶ人たちの手前もあるし、そういうわけには……」

「シロウ、呼ぶといっても誰を?」

「誰って……ランサーとか、キャスターとか……」

「それならば特に気にする必要はないと思うのですが」

「え?……あ!?

そうだ、呼ぶのなんて大抵サーヴァントとか魔術師なんだし、

別にお偉いさんが来るわけでもない。

だったら、別にうちでもいいのか。

葛木先生とキャスターは式を挙げなかったから、

サーヴァント連中には結婚式っていう概念薄いだろうし。

人数も多くはないから十分家に入るし、料理も自分達で作れば少しは安くなる。

なにより式場代がまるまる浮く!

「セイバー、ナイスだ!」

「ありがとうございます、シロウ」

「あとは、アーチャーとの相談次第かな?」

「ええ、キリツグ。きっとアーチャーも賛成してくれます」

Hahahahaha!!と何故かアメリカンライクに笑いあう三人。

と、そこへ。

「いい式場見つけたわセイバー!!

  サービス内容もいいし、なにより格安よ!!」

……すっかり忘れていた遠坂が、雑誌片手に飛び込んできたのだった。



「……ごめん、セイバー達の意見聞くの忘れてたわ」

「気になさらないでください、リン。貴方の心遣いはとても嬉しい」

遠坂が飛び込んできた後。

ついさっき三人で話し合った事を説明すると、

遠坂は『やっちまった』という顔をして、居間へと戻っていったのであった。

ついでに俺たち三人も居間に移動して、お茶を淹れつつ相談再開。

「で、披露宴はここでやるとして、肝心の式本体は?」

指をピン、と立てる遠坂のおなじみのポーズ。

「ここではできないのですか?」

「できないこともないと思うけど……」

俺もよくわからないんだよなぁ。

あんまり調べたことってないし。

「昔は自宅で結婚を誓う人前式も多かったみたいだけど、

  今はあまりやらないみたいだね。時代の流れかな」

親父が珍しくまともな発言をしている。

もっとも、一応年長者なんだしこのくらいは当然……か?

「となると、やっぱり教会かしら」

「カレンのとこか」

遠坂の呟きに、なんとなく脳内でシミュレーション開始。

相変わらずヒマしてるみたいだし、大喜びで引き受けてくれそうだけど。

「セイバーは、どうだ?教会で構わないか?」

「私は構いませんが……やはりアーチャーの意見も聞いてみないことには」

「確かに」

個人的には、完全無視して進めてもいいくらいなんだけど。

と、そこへ。

「今帰ったが……顔をつき合わせて何の相談だ?」

当のアーチャーが帰ってきた。

時刻はもう三時。

仕事も終わっていたらしい。

「私達の式についてだそうですが」

「式……ああ、そうか。済まない、セイバー。

  私としたことがうっかりしていた」

セイバーの説明を受けて、アーチャーは何度も頷いている。

コイツ、式のこと完全に忘れてたな。

「それで、なにか決まったのか」

「決まった云々の前に、セイバーの希望を聞いただけよ。

  アンタの意見も聞くんだって。いいわねー、新婚さんは」

遠坂のからかい発言に、セイバーが顔を赤くして俯く。

だが、アーチャーは嘲るような笑みを浮かべ、口を開く。

「羨ましければさっさと既成事実でも作ったらどうかね?

  グズグズしていては身近な敵にかっさらわれてしまうぞ?マスター」

「うっさい色ボケ英霊」


ズグッ!!


言い終わると同時、電光石火の地獄突きがアーチャーの喉を的確に捉える。


「がふっ!!」


ちょっぴり吐血しながらその場に倒れこむアーチャー。

喉突き破ってないだろな、あの貫手。

あ、なんか痙攣してる。

「ふぅ……」

それを見ていたセイバーが、ため息をつく。

「まったく、余計な言動でリンの怒りを買うところはシロウと変わっていない」

「俺、そんなに自爆してる?」

「はい。ただ、シロウは危機的状況から逃れようとしてのものですから、全く同じとは言えませんが」

やっぱり、俺とアイツは違うんだな。

……なんてこんなトコで確認しても嬉しくねぇ。

「やっぱりアイツの意見は放っておきましょう」

もはやアーチャーに人権はない。

もともとサーヴァントだから人間じゃないけどさ。

「で、教会にするか別の所にするかだけど……」

遠坂がまた話を再開し始めたちょうどその時。
































「あれー、シロウ達なにやってんの?」
































「私とアーチャーの結婚式の相談です……が……」

反射的に答えるものの、後半言葉が詰まるセイバー。

その視線の先に居たのは、我らが理不尽女王、藤ねえ。

何気にアーチャーを踏んでいる。

よく踏まれるな、アーチャー。

「……結婚式?」

「は、はい」

下を向いているために表情の読めない藤ねえに、ややどもるセイバー。

「昨日、正式に婚約したのですが……」

「……婚約……?」

怖い!!

いままでのどの藤ねえよりも怖い!!

ふと数秒後には爆発確実!!なんとかしてくれ、親父!!

『士郎ー、僕幽霊だから昼間は出歩けないんだー。ごめんよー』

なんて言いながら姿を消してスタコラ逃げていく親父。

アンタさっきまで平然とフラついてましたよねぇ!?

逃げた親父を心中で責める間にも、タイガーカウントダウンは続いている。
































5、
































4、
































3、
































2、
































1、
































0!!
































「うわーーーーーーん!

セイバーちゃんに先越されちゃったーーー!!」
































タイガー爆弾、カウントに忠実に爆発。

……なんで藤ねえにきっちり説明しとかなかったんだろう。

今更ながらに悔やむ衛宮士郎1○才の春先であった。






む、今何か抑止力が。






あとがき


で、結婚式前のドタバタその1。

構成上、藤ねえの出番は次回に回りました。

ラスボスはその次あたりか?


オリキャラに関する意見、まだまだ受け付けてますんでよろしくお願いします〜。




それでは、次回もヨロシクフィィィィィィィッシュ!!



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