「悔しいーーーーーー!」


大暴れ。

まさにそんな言葉を体現するかのようなわめきっぷり。

その背後には虎の幻影。

すわ、これがアンタのスタンドかっ……!

「落ち着いてください藤村先生!!」


「これが落ち着いていられますかーーーー!!

  よりにもよってセイバーちゃんに先を越されるなんてーー!!」


どういう意味だ、藤ねえ。

セイバー、なんか難しい顔してるし。

と、そろそろ本気で止めねばと立ち上がったその時。

「……なんてね」

最高潮だったはずの藤ねえの怒りは、一瞬にして鎮火した。

舌をペロッと出すイリヤみたいな仕草で、あっけらかんとしている藤ねえ。


『……へ?』


状況が理解できずに間の抜けた声で合唱する俺たち。

と、そこへ、

「タイガにはもう説明してあるのよ」

と、藤村組へ行っていたイリヤが、ひょっこりと現れたのだった。



































Mother,Father,Lover,and Married Knight

   第7話      by楓野









「つまり、イリヤが藤村組に行ってたのは―――」

「そうよ、タイガに報告しに行ってたの」

全員でテーブルを囲んで座って、イリヤからの事情聴取。

朝から姿が見えなかったのは、藤ねえに説明しに行っていたためであった。

つい先ほどまでかけてようやく納得させたのだとか。

「もう大変だったわ。暴れるし、泣くし、叫ぶし。

  タイガの部屋なんかすごいことになってるわよ」

渋面でため息をつくイリヤ。

今頃、若い衆さんたちは片付けに忙しいんだろうか。

今夜はイリヤの好きなものでも作って、藤村組にもなにか差し入れよう。

「それでは、先ほどの咆哮は?」

「アレは本音ー。一番最初に結婚しようと思ってたんだけどねー」

無理っす、藤ねえ。

というかそんな結婚願望あったのか、一応。

「うん、でも言いたいことは言ったからスッキリしたー」

そりゃそうだろう、背後に虎がハッキリ見えてたし。

「それでそれで?セイバーちゃん、男の子女の子?」

一転、興味津々な目でセイバーを見つめる藤ねえ。

いや、正確にはセイバーのお腹の子を、か。

「それは生まれるまでは判らないのでは?」

「あ、産婦人科に行けばわかるわよ」

「なんと、そうなのですか!?」

「明日にでもアーチャーと一緒に行って来なさいよ」

遠坂の言葉に、セイバーが驚愕をあらわにしている。

そうだろうなぁ、セイバーの時代に今やってるような検査なんてあるわけもないし。

「楽しみねー、セイバーちゃんの子供」

「ええ。贅沢は言いません、健康に生まれてきてくれれば……」

幸せそうに微笑むセイバーと、まだ何も聞こえないだろうにセイバーのお腹に耳を当てる藤ねえ。

そして対照的に不幸そうにズタボロになっているアーチャー。

藤ねえが吼えるたびに踏みつけられていたので、もはや虫の息。

俺の背後でのびているのだが、さっきから身じろぎ一つしない。

「……生きてるか?」

「…………」

返事はしないものの、ズビシィ!とサムズアップを決めるアーチャー。

この分なら大丈夫だ。

「終わったかい?」

などといいながらまたひょっこりと顔を出す親父。

思いっきり逃げておいてよくもまあ。

「久しぶりだね、大河ちゃん」

「……切嗣、さん?」

親父を見た藤ねえが硬直する。

「大きくなったね。元気そうでなによりだよ」

「……え?……」

なんか、様子がおかしい。

「あ!」

イリヤが小さく声を上げる。

手招きして、

「どうかしたのか?」

と聞いてみると。

「え、えーっとね……」

焦ったように視線をあちこちにさまよわせ始める。

同時に、藤ねえも目がグルグルし始めて、視線があちこちに飛ぶ。

「その……セイバーとアーチャーのこと説明するのに忙しくて……」

イリヤがすまなさそうに体を縮めて話し始める。

藤ねえの体は左右にふらふらと揺れ始め、


「……ゴメン、キリツグのこと説明してないの」


「……はぅ……」

イリヤの言葉とともに、藤ねえはぶっ倒れて気絶したのだった。






「ほんっとーにゴメンなさい!!」

「いいって、イリヤ」

「ええ、説明に困る話題ではありますし」

「セイバー達のことを納得させただけでも功労賞ものよ?」

とりあえず、布団しいて藤ねえを寝かせたその横で。

謝りたおすイリヤと、それをなだめる俺たちの姿があった。

「しかし、どう説明する?」

「それが問題だね」

アーチャーの言葉に、親父が頷く。

「藤ねえ、親父の葬式にも出てるしな……」

「ならば、素直に幽霊であると言うしかないのではないでしょうか?」

それが一番なのかな……。

「親父は?それでいいか?」

「まあ、仕方ないんじゃないかな」

胡坐をかいて腕組みしながら言う親父。

親父がそう言うなら、これで行くか。

それから数分後。

「……うー……」

藤ねえが、うめき声を上げて目覚め始めた。

「親父、身を隠してくれ」

「わかった」

アーチャーの声に、親父がスウッと消えてゆく。

どうやら、霊体化したらしい。

「ん……」

藤ねえがゆっくりと瞼を開く。
































「に゛ゃーーーーーー!!


バビロニアの神よ我に力をあたえたまへーーーーー!!!」



「ゴハッ!?」
































起き上がるなり、俺の鳩尾を強打する藤ねえ。

「う……ぐ……は……」

呼吸ができない。

つーか何故に俺が。

「あれ?士郎?」

きょとん、とした顔で畳に突っ伏した俺を見下ろす藤ねえ。

寝ぼけていたか、なんか妙なものが憑いていたかしたらしい。

具体的にはどっか異次元の英霊っぽい存在が。

「気分はいかがですか、タイガ」

「うん、大丈夫……ってそうだ!!切嗣さんのオバケがいたのよぅ!!」

「そのことなのだが……」

慌てる藤ねえを制しながら、アーチャーと遠坂が親父が復活した経緯を説明する。

無論、あの壊れた言動は伏せつつ、だ。

一通り説明を聞き終わると、

「へぇ……そんなこともあるのねー」

とのたまった。

さすが藤ねえ、適応能力が高い。

「もう、大丈夫ですか?」

「うん。私も、切嗣さんとお話したいし」

遠坂の問いに藤ねえがそう答えると、親父がスッと姿を現す。

「ごめんね、大河ちゃん。怖がらせちゃったかな」

「いいえー。切嗣さんとまた会えて嬉しいです」

朗らかに会話し始める藤ねえと親父。

これで、親父が家の中フラついてても問題ない。

問題あるとしたら一成とかがこの家に来るときだけど、

それも最近ご無沙汰だし、いきなり来るようなことはないだろうからOK。



さてと、セイバーと藤ねえが騒ぎ出す前に食事の仕度をするとしようか。

………呼吸が元に戻ったら。







あとがき


藤ねえ編、終了(早)。

藤ねえムズ〜……ここまで難しいキャラ初めてです。

なんか藤ねえっぽさが全然出てない気がする……。

英霊(違)タイガの方ならもうちょい書きやすいのでしょうか。


次回はキャスター登場。

彼女のとある計画が発動します。





それでは、次回もズビシィッ!とヨロシク!!



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