あれから一週間。

セイバーは母子ともに問題なく日々を過ごしていた。

アーチャーは相変わらずウェイターに精を出している。

まあ、帰ってくるとイチャベタイチャベタするのにはちょっと閉口だが。

というかこの家に住み続けるつもりなんですか。

別にいいけど。

そんなある日。


ピンポーーン……


「はいよー」

呼び鈴の音に反応して、玄関へと向かう。

そこには。

「お邪魔するわね、坊や」

「だうー」

先月生まれた赤子を抱いたキャスターがそこにいたのだった……。



































Mother,Father,Lover,and Married Knight

   第8話      by楓野









「……なにしにきたんだアンタ」

「あら、懐妊祝いに来てあげたのに」

しれっ、とのたまう若奥様。

「それでセイバーはどこかしら♪」

一瞬にして顔が崩れた。

なんていうかデレデレだ。

「あう〜」

キャスターの腕の中の赤ん坊が、母親の顔をみて笑う。

いや、こんなんであやされるってどうよ?

「なあ、この子名前はなんていうんだ?」

「マコトよ」

また一瞬にして顔が引き締まる。

なんか見てて面白いんですが。

「字は?」

「誠意の誠、と書いてマコト」

「葛木誠か。どっちがつけたんだ?」

「意味は私が。字は、宗一郎様に」

「へぇ……」

「さ、セイバーを出しなさい♪」

また緩むキャスターの顔。

「出せも何も居間にいるよ」

「あら、そうなの♪」

ルンルン気分でスキップするように歩いていくキャスター。

それに連動しているのか、抱かれている誠もキャッキャと喜んでいる。

「似た者親子……なのか?」

なんてちょっと呆気に取られつつ、俺も居間へと向かうことにした。



「キャスター!?」

「キャスターさん!」

「お久しぶり、セイバー♪桜さん」

露骨に警戒するセイバーと、喜ぶ桜、デレデレなキャスター。

そして母親に呼応して機嫌が良くなる赤ん坊、誠。

こいつらなんか繋がってんだろか。

繋がってんだろうなぁ、親子の絆とかそんなんで。

「布団、いるよな……座布団でいい?」

「ええ、構わないわ」

俺と話すときは完全に元に戻るんですかそうですか。

などと心の中でぶつくさ言いながらも、座布団を出す偉い俺。

「かわいいですね……抱いてみてもいいですか?」

「ええ、どうぞ」

こわごわとした様子で、桜がキャスターから手渡された誠を腕に抱く。

「わぁ……」

誠を抱いた桜が、ふわりと微笑む。

……いい。なんかいい。

ぷにっ、と桜が誠の頬をつつくのも、やたらにイイ。

「それで、今日は一体何の御用で……?」

「セイバーのお祝いにね」

桜の問いに、またデレッと顔を崩して答えるキャスター。

「男の子なのかしら?それとも女の子?」

「女とのことですが……それがなにか」

セイバーが怪訝そうに答える。

検査の結果、お腹の子は女の子だったらしい。

遠坂や桜なんかは色々教え込もうと今からワクワクしているようだった。

「そう……女の子なの」

キャスターが、静かに呟く。

そして。
































「うふふふふふふふふふふふふ……」
































ものすごい嬉しそうな笑い声を上げ始めた。

微妙に怖い。

「ねえ、セイバー」

メッチャイイ笑顔でセイバーに詰め寄るキャスター。

「な、なんでしょうキャスター?」

気圧されたセイバーが、ちょっと引く。

桜の腕から、キャスターの腕へと戻る誠。

そして我が子に頬擦りしながら、キャスターが口を開く。
































「貴方の子、うちの息子のお嫁さんにもらえないかしら?」
































吹いた。

そりゃもー盛大に、全員で吹いた。

「なななななななな」

セイバーがDJのスクラッチのように『な』ばかりを繰り返す。

「何を言っているのですかあなたは!!」

「あら、息子の将来を心配するのは親として当然じゃない♪」

「気が早すぎます!!」

「何事も備えあれば憂いなしよ♪」

爆発したセイバーの言葉を、のらりくらりとかわすキャスター。

つか、先走りすぎ。

生まれて一ヶ月で嫁が決まるってどうよ。



「幼馴染として育つ二人……。

  幼稚園から小学校、中学校と同じクラス。

  仲の良かった二人、思春期を迎え段々と疎遠になっていく……

  そして高校に入り、お互いに自分の気持ちに気づくもなかなか言い出せない。

  そのまま時は流れ卒業式、涙する級友達を尻目にそっと抜け出す二人。

  そして校舎裏でお互いに告白し、二人は永遠に結ばれるのよ……ああ……」



なんかトリップしているキャスター。

ヘンなもんに影響でもされたか。

「ええ、恋愛小説を少々」

「それにずっと同じクラスってありえないだろ」

「そんなもの、魔術使ってどうとでもするわよ」

さいですか。

「で、どう?この素晴らしいプランを現実にしたくない?」

「したくありません!!」

セイバー、全力拒否。

そりゃそうだ。

「あら、残念ね」

意外にあっさりと引くキャスター。

「きっと賛同してもらえると思ったのに」

言いながら、誠の手をつまんであやすキャスター。

『残念ねー』というキャスターの声と、心なしかしょぼんとしている誠。

親子だ。

「それじゃ、帰るわ」

「もうですか?」

立ち上がるキャスターに、桜の残念そうな声。

「ええ、食事の仕度もしなきゃならないし。

  お邪魔したわね、坊や」

言いながら玄関へと向かうキャスター。

一応見送るために、俺も玄関へ向かう。

その後ろを、セイバー達がぞろぞろとついてきた。

キャスターが靴をはく間、桜が誠を預かる。

立ち上がると、桜から誠を受け取ってこちらに振り向く。

「そうそう……」
































「これで引き下がると思わないでね♪」
































『へ!?』


俺たち全員の間の抜けた声が唱和する。

「セイバーの娘はうちのお嫁に必ずいただくわ!!」

そう言い残し、『オ〜ッホッホッホ!』と笑いながら凄まじい勢いで遠ざかるキャスター。

そしてキャスターと共に赤ん坊らしく笑っている誠。

しばし呆然とする俺達。

「……セイバー、がんばれ」

「……正直、不安です」

なんとか搾り出した俺の言葉に、セイバーが苦渋に満ちた声で答える。


まだ見ぬセイバーとアーチャーの子供。

その将来が、早くも決まりかけたとある一日であった―――。







あとがき


キャスター初登場。

ついでにキャスターと宗一郎の子供も登場。

わりとおもろい赤ん坊になったと思うのですがどうでしょう?

キャスターの『息子の将来のお嫁さんゲット作戦』は、書きたかったネタの一つです。


次回はラスボス。

あと2,3回で終わるかな……。





それでは、次回もフォウワッ!とヨロシク!!



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