キャスター来襲から2ヶ月。

あれから何度もキャスターはやってきたが、その度にセイバーが追い返した。

……ストレスになってなきゃいいけど。

で、本日。

久々にアーチャーが休みを取れた日曜日。

藤ねえやイリヤ、ランサーまでやってきてみんなでお茶を飲んでたりする。

「平和ね〜」

「ああ……たまにキャスターは来るけどな」

お茶をすすりながら呆ける遠坂と俺。

ランサーはアーチャーを冷やかすのに忙しく、

セイバーは桜とライダーと何事か楽しそうに話している。

藤ねえとイリヤはゴロ寝モードで昼寝真っ只中だ。

「でも、なんか忘れてるような気がするのよね〜」

「なんかあったっけ?」

記憶をさらってみるが、呆けているせいか何も浮かばない。

「このまますんなりハッピーエンドとは行かないような気がするのよ」

「おいおい、イヤなこと言うなよ」

「ま、何事もないのが一番なんだけど」

「ああ、もう騒ぎは沢山だよ」

そんな呆けた会話をしていると。


ドガァッ!!


玄関の方でなにか砕けたような音が響き渡り。


どたどたどたどたどた!!


廊下を荒く突き進む足音が聞こえて。


バンッ!!


襖がぶっ壊しかねない勢いで荒々しく開かれ、


「どういうことだ、貴様ら……!!」


この上なくお怒りになった英雄王が、仁王立ちしていたのであった―――。



































Mother,Father,Lover,and Married Knight

   第9話      by楓野









「納得のいく説明をしてもらうぞ、贋作者フェイカー……!!」

普段のバカっぷりからは想像もできない鋭い眼でアーチャーを睨みつけるギルガメッシュ。

ヤバイ。

今のギルガメッシュは、とにかくヤバイ。

何故って、彼曰くの王気オーラが、Fate本編後半のものに立ち戻っているのだ。

背後には既に王の財宝が開かれかけている。

不用意な説明をしようものなら、ここにいる全員ミンチにされる―――!!

そんな俺の心配をよそに、ギルガメッシュはずかずかと居間に侵入し、

アーチャーとセイバーの対面にどっかりと胡坐を組んだ。

「おい、茶を出さぬか!!早くしろ、王を待たせるな!!」

「は、はい!!」

怒りに任せて怒鳴り散らすギルガメッシュ。

その気迫に、桜が反射的に立ち上がって台所へ向かう。

藤ねえが寝てるのが救いだ……下手に騒がれたらこの場で宝具の雨が降る。

超特急でお茶を入れ終えた桜が、ギルガメッシュの前にお茶を置く。

ああ、あんなに震えて……。

お茶を出し終えると、ずざざざざっ!とギルガメッシュから遠ざかる桜。

できれば、冬木市からも脱出して欲しい。

出された茶を一口すする英雄王。

「ふん、不味い……雑種共の飲む茶とはいえ本来なら厳罰に処す所だ」

「おい、ギル。出されたモンに文句つけてんじゃねぇよ」

アーチャーの隣で胡坐をかいていたランサーが、ギルを睨みつける。

だが、

「我に話しかけるな槍兵。貴様と言えど次に話しかけたらば磔刑に処す」

ランサーの眼光を上回る、カリスマ全開の絶対零度の眼がランサーのみならず居間にいる全員へと向いた。

気圧されたわけでもないだろうけども、ランサーはそっぽを向いてぶちぶちと何か言っている。

ギルガメッシュはといえば、不味いと言いながらも茶をすすり続けている。

「さて……我がここに来た理由はわかっておろうな」

茶を半分ほど飲んだところで、ギルガメッシュは静かに口を開く。

その視線は、もうセイバーとアーチャーの二人しか見ていない。

「……贋作者フェイカー。我のものに手を出すとはどういった了見だ?」

僅かに首を動かし、アーチャーに視線を集中するギルガメッシュ。

そのアーチャーも、ギルガメッシュの視線を真っ向から受け止め、真っ直ぐに見返している。

いつものヘタレぶりはどこへやらといった感じだ。

だが、返答はアーチャーではなく、セイバーから発せられた。

「ギルガメッシュ、私はシロウの剣となり、盾となることを誓った身。

  そして今は、アーチャーの妻となることを誓った。

  私は誰のものでもない……いや、敢えて言おう。

  私は、私の伴侶となるアーチャーのものであると」

きっぱりと、迷いのない声で言い切るセイバー。

その宣誓は、傍から聞いている俺にも心地好く感じた。

そして、その傍らでアーチャーも口を開く。

「英雄王。私はセイバーを愛している。

  彼女は私を夫と認め、私も彼女を妻と認めている。

  私は、彼女を永劫に離さない……離しはしない。

  セイバーを手に入れると言うのなら私を殺せ。

  だが、その時は覚悟を決めろ。

  私は私の持てる全ての力、あらゆる手を尽くして貴様を叩き伏せてみせる……!!

さざ波のように静かな、それでいて魂から生まれ出でたかのように熱い言葉。

ああ……そうだな、アーチャー。

大切な人が奪われるのなら全力で阻止しなくちゃな。

お前のことは好きじゃないけど、今ばかりは共感する。

たとえお前が負けたとしても、セイバーをギルガメッシュのものになどさせやしない……!

「よく言えたものだ。我に相対して未だそのような台詞を吐けること、褒めてやろう」

瞳を閉じ、口元に笑みを浮かべるギルガメッシュ。

だが、その声は地獄の底を這うかのような恐怖と戦慄に満ちている。

来るか―――。

こっそりと、ギルガメッシュに気づかれないように投影の準備を始める。

基本骨子を解明し、構成材質を解明し、憑依経験に共感する―――。

俺の力じゃ何にもならないかもしれないけど、何もしないよりはマシだ。

見れば、遠坂も桜もライダーも、いつでも戦闘に入れるように準備している。

セイバーとアーチャーも、どんなタイミングで攻撃が飛んできても対応できるよう慎重に構えている。

頼むぞ、アーチャー。

セイバーもお前ももちろんだけど、お腹の中の子も守ってやってくれ――。

緊張感が張り詰めた居間の中で、ギルガメッシュの口がゆっくりと動く。

「最後の通告だ、セイバー。我の物になれ。

  我の持てる全て、この世の全てが貴様のものだ。

  そして我は寛大だ。父親が誰であるかなど、我は気にもせぬ。

  その腹の中の子も、我の子として何不自由なく育て上げてやろう。

  我はお前を愛している。我を愛せ、セイバー。我のものとなれ!!」

「断る。私が忠誠を誓うのはシロウただ一人、愛するのは夫たるアーチャーのみ。

  私はアーチャーの妻となり、我が伴侶はアーチャー一人。

  そして何より―――私は生まれてくる我が子を裏切ることはできない」

強い決意に満ち溢れた、遠凪のように静かな声。

その声を生み出すのは深い愛情、そして母親としての強さ。

……なあ、お前は幸せだよ。

まだ生まれていないけど、聞こえているんだろ?二人の声が。

こんなに強くて愛してくれる両親がいるんだ、幸せでないわけがない―――!

セイバーの瞳は、ギルガメッシュを真っ直ぐに見据えている。

その瞳から目をそらし、ギルガメッシュは顔を隠すようにうなだれた。

「……そうか……」

虚ろな、何の感情も含まぬ空っぽの声。

その一言だけを口にして、ギルガメッシュは沈黙する。

どれだけ静寂が続いただろうか。

「…………クッククク…………」

不意に、笑い声が響いた。

「クッ…………ククククククク…………!

  クハハハハハハ…………ハーッハッハッハハハハハハハハハハハハ!!!!」

それは、ギルガメッシュの笑い声だった。

何をするでもない、何を言うでもない、ただ笑い続けている。



「ッハハハハハハハハハハハハハハハ

  ハハハハハハハハハハハハハ!!!!」


まるで気でも触れたかのように大声で笑い続けた。

いつまで笑うんだろうかとさすがに少々不安になり。

そろそろ止めるか?と目配せしあったその瞬間!!
































「認めぬーーーーーーー!!」



『キレたーーーーーーー!!』
































ギルの大絶叫が響き、それとともに全員の叫びが合唱したのだった。

「我は人類最古の英雄王なるぞ!!

  我の手に入らぬものなどあってたまるものかーーーー!!」

まるでいじけた藤ねえのごとくギルが吼える。

あ、なんか虎の代わりに黄金の光が。

「!?うそ、居間が一瞬にして戦場に……!?

  あの金色クン、なんか本編のノリで殺しあうつもりですよ……!?」

いつの間に起きた藤ねえ!?

しかも言動おかしいし!!

どうも英霊だかなんだか判らないものが藤ねえに降りているらしい。

服が虎縞の服から剣道着に変わってるし。

「きゃあああーーー!甦る本編のトラウマ!」

うん、もういつの間に起きたかなんてツッコまないぞ、俺。

あ、なんかイリヤも藤ねえと同じ状態っぽい。

こっちはいつのにかブルマに変わってる。

「師しょー、また心臓がバクバクいいだしました!やっぱり恋っすよコレ!」

「そんな恋いらねー!なんて言ってる場合じゃなくてピンチピンチ!」

うん、たぶんそれは恋じゃない。

どっちかというと殺し愛の部類だ。

「えーい、こうなったらダメもとで虎竹刀に内蔵しておいたプロトンスイッチを押すしかないか……!?」

そんなもん仕込んでたんですか、どっかのよくわからん英霊っぽい存在。

というか、事態を加速させないでください。

「たわけめ、火力勝負で我に太刀打ちできると思ったか!カクカクするのは我が先だ!」

フレーム落ちするほど宝具撃つな、英雄王。

あと、やるなら外でやってくれ。

「きゃー、恋のニュークリアロマンス!タイガと金色、どっちが先でも冬木市が壊滅しちゃうーーー!」

だから外でやれって言ってんだろがよくわからん英霊っぽい存在共!!

「もはや人類にまったなし!我と共に死に、我と共に死ねぇい!」

「それかぶってるかぶってる!きゃー、たーすーけー……!」

フラれた腹いせに人類抹殺しようとする英雄王。

藤ねえっぽい人が叫び始めたと同時、
































グゴッ!!
































物凄い打撃音が響いた。

そしてその音から遅れること数秒、



「―――ぬ。グッバイ我」



そう言って、人類まったなしだったはずの英雄王はばったりと倒れ伏したのだった。

その後ろに立っていたのは―――

「バーサーカー?」

「うむ。久しいな、少年」

そう、アインツベルンの森で農業にいそしんでいるはずのバーサーカーであった。

「なんでここに?」

「イリヤ在るところに私在り、イリヤの危機には全速でもって駆けつけるのだ」

そうなんですか。

ちらり、とイリヤと藤ねえを見てみるが、既に二人は元の服装に戻り、再び昼寝に入っている。

……なにしに来たんだろう、あの英霊っぽいの二人。

「いや、まったく驚いた。

  イリヤの魔力ブルマ力の昂ぶりを感じて駆けつけてみれば、あわや人類皆殺しの危機。

  とっさに後頭部を殴りつけてしまったが……」

どうでもいいけどイリヤの魔力は『ブルマ力』なのか。

で、殴られた当のギルはというと、首を向いてはいけない方向に向けたまま倒れ伏している。

「……殺っちまったんじゃないか?」

「……やもしれん」

おめでとう、晴れてム所行きだバーサーカー。

助けてもらっといてなんだけど、官憲には逆らえん。

「バカなヤツだったけどよ、いなくなると寂しいもんだぜ……」

「やめんか!最終的責任を私に取らすな!!」

「うう……お弁当持って面会に行くからねバーサーカー」

「子供が生まれたら見せに行きますので……」

ム所行き後の光景を想像し、涙するイリヤとセイバー。

そして頭を抱えて苦悩するバーサーカー。

そんな中。

「勝手に我を殺すな雑種共……」

首を両手でゴキン、と回して起き上がるギルガメッシュ。

「全く、無礼な者共め……」


「感謝するぞ英雄王ーーーーー!!」


起き上がったギルガメッシュに、涙を流しながら抱きつくバーサーカー。

ギルガメッシュの肩をバンバンと叩いて喜び、また抱きしめる。

「ありがたい、誠にありがたい!!よくぞ生きていてくれた!!」

「貴様が殴ったのであろうが神の仔!!!!」

ギルガメッシュのツッコミにも耳を貸さず、メキメキと腕に力を込める。

あのさ、そのままだとホントにム所行きになるぞ?

ギルガメッシュの顔色が赤から紫に変わってきてるし。

「む、危うく絞め殺す所であった」

パッ、と腕を放すバーサーカー。

ようやく開放されたギルガメッシュが、ゲホゲホと咳き込む。




しばらく咳き込んだ後、

「……フン」

一つ鼻を鳴らすとそのまま立ち上がるギルガメッシュ。

「興醒めだ。帰るぞ」

ポケットに手を突っ込んで歩き出し、居間を出て行こうとする。

開け放したふすまに手をかけ、足を止めた。

「母親に成り下がった騎士王になど興味も未練もない。

  贋作者フェイカー、貴様にくれてやる」

本当につまらなそうに言って、また歩き出そうとするギルガメッシュ。

そこに、桜が立ち上がった。

「待ってください、ギルガメッシュさん」

真剣な声で、桜がギルガメッシュを呼び止める。

その目は、なんの怯えもなくギルガメッシュを見つめている。

「……なんだ」

足を止め、鬱陶しそうに振り返った。

その視線にわずかにたじろぐも、桜が口を開く。

「成り下がった、というのは許せません。訂正してください」

「そうね、同じ女性としては見過ごせないわ。訂正しなさい」

遠坂も立ち上がり、桜と二人でギルガメッシュを見据える。

「……フン……」

ギルガメッシュは少しイラだったように体をこちらに向け、

「……『母親になった騎士王になど興味も未練もない』……これでよかろう」

そう言うと、再び身を翻し。

こちらの返答も聞かずに、歩き去った。




「……興醒めだ。全くもって、興醒めだ……」




そんな呟きを、残しながら……。







あとがき


英雄王、強襲。

長台詞が多くて苦労しました。

アーチャーも久々にカッコ良くできたかな、と。

ギルに関しては、最後の呟きで少しでも哀愁を感じていただければ、それでOK。


次回、いよいよ結婚式!!

今回が似非シリアスだった分、ハジけて行こうと思ってます。





それでは、次回もアッフォゥ!とヨロシクゥ!!



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