《前回のあらすじ》

ムッチャおっぱいの見たくなったギルは、

士郎とともに凛を脱衣麻雀へと引きずり込むことに成功する。

紆余曲折の末、おっぱいを決める士郎だったが、そこにセイバーが現れる。

いち早く危機を察知した士郎と凛はギルを生贄に捧げ、これを乗り切る。

濡れ衣を着せられたギルは、手加減なしのセイバーに死ぬほど叩きのめされたのであった。



































冬木3

   『英雄王参上!!』

by楓野




「復讐してくれる……」

衛宮邸の道場、セイバーはもういない。

そこで、全裸のままのギルは一人呟いていた。

「何故脱衣麻雀していただけの我があの雑種の娘を襲ったことになっているのだ!!」



〜回想〜

「来なさい!!」

「騙されておる!貴様はあやつらに騙されておるのだ!」

「なにを馬鹿なことを。士郎達が私を騙すはずがないではありませんか」

「我の目を見ろ!!この目がウソをついている目か!?」

「全裸の人間にウソもへったくれもありません」

「ぬおおおおおおおおおお!!!!

〜回想終了〜



蘇るつらい記憶。

それと同時に、ギルの耳に士郎と凛が嘲笑する幻聴まで聞こえてきた。



〜幻聴〜

『金ぴか一人が犠牲になればいいのよ』

『セイオタのくせに女のおっぱいが見たいとか言うからだ』

*……セイオタ=セイバーオタク。この世でただ一人ギルのみが名乗ることを許される蔑称。

『『ギャハハハハハ……』』

〜幻聴終了〜



「あの雑種どもめどうしてくれよう……」

ギルの脳内で、復讐シミュレーションが開始される。



〜シミュレーション1・VS士郎〜

『死ね!』

背後からケリを入れる

干将・莫邪で無限コンボ

『死ぬ(ザシュ)、死ぬ(ザシュ)、死んでしまう(ザシュザシュ)……』

全治三週間。

〜シミュレーション終了〜


「むぅ……」


〜シミュレーション2・VS凛〜

『オラ!』

背後から乳をもむ

『オラ!!オラ!!オラ!!オラ!!』

ガンド+宝石乱れ撃ち

殺される。

〜シミュレーション終了〜



「ガクガクブルブル((;゚Д゚))ガクガクブルブル」

どのルートを通ってもバッドエンド確定というこの不条理。


「ちっきしょーーーーう!!」


悔しさのあまり、なんかキャラの違う英雄王。

そのまま、その場に体育座りして泣き出すギル。

むちゃくちゃ鬱陶しい。

「………」

と、急に黙ったかと思うとぬっ、と立ち上がる。

そのまま、


「フン」「フン」「フン」「フン」「フン」


とどこかに向かってダッシュするのだった。

―――全裸で。





たどり着いたのは、居間の電話前。

「フン」「フン」「フン」「フン」「フン」「フン」「フン」「フン」

ぴぽぴぽぱぽぴ。

猛烈な勢いでダイヤルをプッシュする。

プルルルルル……

『はい、穂群原学園です。ただいま、電話に出ることができません。

  御用の方は発信音の後にメッセージをお入れください』

ピ〜〜〜ッ。

「遠坂とかいう雑種は、ヤリマンだ」

物凄いことを言い出すギル。

しかもなんか顔が変になっていた。

「貴様ら教師には清い交際だとか言っておるらしいがな、

  同じ学年の衛宮という雑種と最近になって毎日のようにサービスタイムを利用し、

  獣のようにヤりまくっておるぞ」

事実無根のウソをべらべらとまくし立てる。

鼻をほじりながら。

「近いうちに、職員会議でも開いた方が良いのではないか?」

スッ……

「ちなみに、我は善良な英雄王だ。では、宜しく頼むぞ」

ガチャン。

「ふむ、これでよし」

額の汗を拭うフリをするギル。

その背後から。


「ちょっと金ぴか?」


凛の冷たい声が響き、ムンクの絵みたいになるギル。

全裸で。

「おお、雑種の娘よ。今日もまた美しい」

一瞬にして元に戻り、褒め称えながら凛に抱きつくギル。

繰り返すが、全裸である。

ギルが恐る恐る凛の顔を見ると、

彼女は綺麗な、とても綺麗な極上の笑顔を浮かべて―――




































「善良な英雄王だが、先程の発言を取り消させてください」

―――全力をもって、ギルをボッコボッコにしたのだった。

後ろにいた士郎が思わず引くほどのボコボコっぷりである。



「――で、結局セイバーはギルが遠坂を襲ったって信じてたのか?」

「そうだ!!貴様らのおかげで我は!!」

クワッ!と士郎に迫るギル。

「でももう治っちゃってるんでしょ?」

「む。まあな……」

確かに、ギルのケガはもうすでに体中完治している。

本人は『我様だけのスペシャルな能力だ』と言っているが、

実際には単なるギャグキャラ属性である。

「あのまま脱衣麻雀をやってた事がばれたら、

  三人ともエクスカリバーの的になってたんだからよかっただろ?」

「それはそうだが……我一人がシバかれるのでは我様一人可哀想ではないか!!」

「だからおわびに今からカラオケにでも招待するよ」

「私と士郎のおごりでいいから」

「カ、カラオケか……」

明後日の方向に目を向けて汗をかき始めるギル。

「遠慮しよう。我は今日から駅前留学するのだ」

「うそつけ」

士郎に腕をつかまれるギル。

無論、駅前留学はまぎれもないウソであるが。

と、士郎はあることに思い当たる。

「ギル……今現在平気で黄金の股間を晒しているお前がまさか……




































  ……人前で歌うのが恥ずかしいのか?」

ポッ、とギルが頬を染める。

だからキモいというに。

「違う!!我はセイバーの両親に挨拶する時のためにイングリッシュをマスターしようと!!」

「いいよ、行くぞ」

ギルを強引に抱え上げて連行する士郎。

「Oh my god!! Oh my god!!」

駅前留学はウソのはずだったが、発音だけは無駄に良いギルであった。




『よ〜ごさずに〜たもってきた〜♪て〜でもよご〜れて〜みえた〜♪』

「きゃ〜!藤く〜ん!」

カラオケ店内、一室。

BUMPのカルマを歌う士郎に、黄色い声援を送る凛。

そしてノリノリで握手を返す士郎。

「ケッ」

そんな二人を悪態つきながら冷ややかな目で見ているギル。

「士郎…ギル…今まで本当の私を隠していてごめんなさい……」

マイクを持つなり、そんなことを言い出した凛。

「実はこのツインテール…初音ミクのコスプレなの!!」

「ええ!!?」

「ころすぞこいつら」

凛のカミングアウトに思いっきり驚く士郎と、かわらず悪態をつくギル。

『メ〜ルト〜溶〜け〜て〜し〜まい〜そう〜♪』

ノリノリで熱唱する凛。

『好きだな〜んて 絶対に言え〜な〜い♪』

しかし士郎とギルは案外聞いていなかった。

「ギルもなんか歌えよ」

「いいよ我は」

珍しくいつもの我様口調ではない。

『だけど〜君〜のこと〜が♪好きなの♪』

「お前飲まないと歌えないタイプか?」

「いや、そういうのではなくてだな」

口ごもるギル。

「じゃーとりあえずビールを」


グビビビビ。


言うと同時に士郎は瓶から直接ビールをギルの口に流し込む。

流し込まれたビールを全て飲み干したギルは、一瞬静かになったかと思うと、




































「ギャ〜〜〜〜〜ハッハハ!!ふざけんなよ!!雑種〜!!」




涙とよだれを撒き散らしながら叫び始めたのであった。

間近で見ていた士郎がチョット引いた。

「なんだこいつ。むちゃくちゃ酒ぐせわるいな」

汗を一筋たらしながら士郎が呟く。

「なんだとこの、我ぶっとばしちゃうぞ」

耳ざとく士郎の呟きを聞いたギルがビール瓶を振りかぶり、




ガチッ!!




士郎の頭を思いっきりぶん殴った。


「ああああああ」

脳天から噴水の如く流血する士郎。

「ギルふざけん」




































スパ。




































な、と士郎が声を発する前に、ギルが手刀でビール瓶の首を切り落とす。

「い、いかん普段は俺より弱いくせにめちゃくちゃ強くなってる」

士郎は四つん這いになり、笑いながら酒を飲み続けるギルから距離をとりはじめる。

「士郎、どうしたの?」

その様子に気づいた凛が声をかけた。

「今、ギルに話しかけないほうがいいぞ。

  酒を飲ませたらえらいことになってしまった」

「しょせんはギルでしょ」

マイクを置いた凛は、ギルの前に立って仁王立ちで見下ろす。

「ちょっとギル」

「あーーーんなんなんだよ」

上目でガンを飛ばしながらギルが答える。


「だめ……だめだわ逃げましょう士郎。

  目がFate本編後半の目になってる、もうシャレは通じないわ」


ブルブルと震えながら士郎の背後へと非難する凛。

前に立つ士郎が、凛をかばうように手を広げる。


「歌うぞ!!」


ギルが突如叫んだ。

「おいそこの家政夫と主人どこへ行く」

こっそりと出て行こうとしていた士郎と凛が、その声にぴたっと足を止める。

「ジュースでも飲みながら我の歌を聞きなさい」

二人を肩に抱くようにしながら席へと押し戻してゆくギル。

なんか優しげな口調が1.5割増で怖い。

ぱっぱらぱっぱらぱっぱらぱっぱら……

前奏が始まり、士郎は頭の血をごしごしと袖で拭う。

『I close〜 my〜 eyes and〜は〜るか遠〜く〜に見えるそ〜ら〜』




































ブーーーーッ!!




































士郎と凛が同時にジュースを噴出した。

『か〜ぎりな〜い夢〜をつめこん〜で〜いま〜旅〜立つ〜』

ギルの歌には音調と音程というものがなかった。

ただひたすらに、サーヴァントの新宝具を思わせるような怪音波を口から発していた。

その音は百人がいっせいに黒板を引っかき、

千人がいちどに紙にマジックで線を引く。

『You will〜 always have the〜 key to my heart〜通り雨〜が〜優〜しさに〜変わ〜る』

それ以上の歌声おんぱをギルは出し続けていた。

士郎と凛の目が白目に近くなり、体はガタガタとヤバげな感じで震え続ける。

『君〜と行く〜よ〜〜明日〜への果〜てしな〜い旅〜』

ギルの歌詞と同時に、凛はあっちの世界への果てしない旅へと出発した。

もはや完全に白目で、口からは泡が吹き出ている。

『Won't〜 you take〜 me in your〜 heart〜』

「遠坂!ここで気絶したら死ぬぞ!!」

士郎が凛の肩をガクガクと揺するものの、反応はない。

「だ、脱出しなければ……俺達に待っているものは……」

凛を背中に背負った士郎が歩き出す。

だが、出口まであと数歩のところで膝が崩れ落ちる。

『You〜 will always〜 have the key〜 to〜 my heart〜〜』

それでも脱出するため、生きるために士郎は這ってでも進む。

もはや思考する余裕などない。

アーチャーとの死闘すら上回る意思と根性で持って、士郎は体を動かし続ける。

『I only〜 want to〜 be with〜 you』

そしてようやく、ようやく士郎は出口のドアに手をかける。

「と、遠坂……た、助かったぞ……」

おもわず士郎の目から涙が零れ落ちる。

だが。




































『Baby you're the key to me Open up and you will see』


ズズズズズズー!!




































「ギャ〜〜〜〜!!!!!!」




































気づいたギルの手によって、あえなく二人は部屋の中へと引きずられるてゆくのであった。

その光景を、部屋の監視カメラだけがじっと捉え続けていた―――。




――スタッフルーム――

机に座って雑誌を流し読みしていたランサー(バイト中)がふと監視カメラのモニターに目をやる。

「なっ!?」

その目が驚愕によって大きく見開いた。

そのモニターには『たすけてHELP』と書かれた紙を持った士郎と、今だ歌い続けるギルが映っていた。

すぐさまランサーは士郎達のいる部屋へと猛ダッシュする。











「どうした坊主!!」



ランサーが力一杯ドアを蹴り開けながら部屋の中に飛び込んだ。

すでにそこにはギルの姿はなく、二人が倒れているだけだった。

「いったい何があったんだ、坊主!!」

士郎を抱え起こしながらランサーが問いかける。

「じゃ……じゃ……」

弱弱しく声を上げる士郎。

そして、


「ジャイアン現る」






士郎は、ランサーに謎の言葉を残すと倒れた。

しかし倒れた二人、士郎と凛だけが知っていた。

ここ某県冬木市で英雄王ジャイアンのリサイタルが開催されたことを―――。









































終。




あとがき



あー難しかった!

歌わせる歌を散々迷ってるうちに大分遅れました。

一応、解説。

士郎:BUMP OF CHICKEN『カルマ』
私的士郎のテーマソングです。
正確には、士郎・セイバーコンビの、かな。
これはサクッと決まりました。

凛:初音ミク『メルト』
これが一番浮かばなかったんで、かなりアレな選曲。
改装ついでにネタをかえて、ミクに変更。
ツインテールつながりですが、実はライダーのほうがコレ系は合うという(中の人が同じ)。

ギル:倉木麻衣『key to my heart』
凛があっちの世界へ旅立つネタを再現したくてこの曲。
『残酷な天使のテーゼ』も候補にあったんですけどね。
原作じゃ演歌っぽいので、テンポがそれほど速くないからこれでいいかな、と。
字だけで歌の下手さを表現するのが意外に難しく、
音符がついてなかったりむちゃくちゃなところで伸びてたりと色々工夫してみましたがどうでしょう?
ふぁて遊記のギルは歌上手いですが、こっちのギルはジャイアンです。
ふぁて張とふぁて遊記は平行世界だと思ってください。



これ、20000ヒット用のSSなんですが、
実は書き終わった時点(2006/1/24)で、30000ヒット達成しています。
なんで、もう一本ふぁて張書こうと思います。
次もまた続編です。
ふぁて遊記とMFLMNも書いてるんで見捨てないで〜…





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