冬木5

   『るろうに慎二−平成剣客天パ譚−』

by楓野




新都。

ぶらぶらとあてもなく歩いているのは、間桐家長男、慎二。

「?」

曲がり角、ふと何かに気づいて足を止める。

「なんで衛宮が新都にいるんだよ」

たまたま新都に遊びに来ていた士郎とギルがそこに居たのであった。

ペタン、と陰でしりもちをつく慎二。

(いやまてよ本当にやつは衛宮か)

すぐ側を通る二人から視線をそらしつつ、慎二は黙考する。

(隣に西川貴則がいたということは曲を書いてる朝倉大介かもしれん)

ウームと唸りながら何事か考え、

建物の陰から体をのぞかせると。


「蒔寺楓は」


「よく吼える」


(間違いない、絶対に衛宮だあのくそガキが!!)

よくわからん確認である。

「誰だ、俺と蒔寺とタイガー二世についてかたりたいやつは」

「フッフフフ」

辺りをキョロキョロ見渡す士郎、そして建物の陰で含み笑いをする慎二。

「誰なんだよ!!」



ザッ!



「元穂群原学園弓道部副長、射貫きの慎二」

「やはり命令とは言えゲイバーで働くのはつらいであろうな」

「俺にも弓兵赤の心の叫びが聞こえてきたもん」

あっさりシカトして歩き去る士郎とギル。

何気にヒサンな話をしているようだ。


「こら〜〜衛宮!!」


慎二、ツバを飛ばしながら絶叫。

「僕だよ僕!慎二!間桐慎二!」

「おおっ!!慎二!久しぶりだな!!」

驚いたように目を見開いた士郎は、

「それじゃー」

またあっさりと慎二に別れを告げるのであった。

「『それじゃー』じゃない!!

「なんだよサインか?」

必死に肩を掴んで止める慎二と、心底どうでもいい士郎。

「誰だこれは?」

「これは俺と同じ小学校にいたやつ」

「これよばわりするな」

「ああ!でも三ヶ月くらい俺と同じ中学にいたか」

「ほう」


「三日間だ!!」


また大声でツッコミを入れる慎二だが、士郎は、

「なんで転校したの?」

と、素朴な疑問をぶつけていた。

「お前のせいだろーが……」

怒りにプルプルと震えながら憎憎しげにいう慎二。



〜慎二回想〜

そう、アレは小学校の卒業式の呼びかけの時が始まりだった……

「お父さんお母さん、今日、僕達は卒業します」


『卒業します!!』


「はじめて修学旅行でみんなといっしょにお風呂に入った時!

  間桐君のチン毛は天パと同じでワカメでした!!」

「なっ!?」


『ワカメでした!!』


「えっ?えっ?」

僕の知らぬところで衛宮が動いて全校生徒に『ワカメでした』と言わせていたのだ。

ちなみに僕は『ワカメパーマチン毛』、略して『ワカチン』というアダ名がついていた。

〜回想終了〜



「僕は泣いた……生まれて始めて本気で泣いた……」

頭を抱えて号泣する慎二。

その後ろでは、微妙な表情で士郎を見るギルと、これも微妙な表情の士郎がいた。

「今となってはいい思い出じゃないか」

「ふざけんな!!」

体中で怒りを表現する慎二。

「あの後桜に『家以外では話しかけないでくださいね。恥ずかしいから』

  と言われた僕の気持ちがわかるか!!」

再び号泣しながら士郎に向かって叫ぶ慎二。

ここが人の大勢通る往来だということをわかっているのだろうか。



〜再び慎二回想〜

しかし悲劇はそれだけでは終わらなかった。

中学に入って幼稚園のときからずっと気になっていた遠坂と始めて同じ組になった。

普段ならすぐさま声をかける僕だけど、彼女に対しては話しかけることもできなかった。

しかし、僕は遠くで彼女を見ているだけで幸せだった。

そんなある日。

「ちょっと慎二」

「な、なんだい遠坂」

「慎二……慎二の下の毛って、頭と同じでワカメなんですって?」

「え!?」

僕は翌日学校を去った……

お爺様に頼んで、校区外の遠い中学に転校させてもらったのだ。

〜回想終了〜



「それじゃ爺さん喜んでたろ。祖父と孫のコミュニケーションとれたんだし」

慎二の肩に手を置き、悪びれることなく言ってのける士郎。

「それでは、雑種は良いことをしたのではないか」

「な?」

「『な?』じゃねぇ!!」

士郎に掴みかかる慎二。

「お前のせいで僕の恋は!!僕の初恋は!!」

「おい落ち着かぬか」


































「ワカチン」


ぴた。


































ドカッ!!!!


































バタッ、と仰向けに倒れるギル。

「次は衛宮、貴様の番だ」

士郎と慎二、二人の鋭い視線が交錯する。

「死ねっ!!」

不意を突いて殴りかかる慎二。


































ガキッ!!


































「ちょっと待った!ギブギブ!まじまじ!きまってるって!!」


ぐぐぐぐぐっ。


これまたあっさりとかわされ、逆に慎二が間接をキメられていた。

「や、野蛮なやつめ……。

  暴力でけりをつけようとするお前の根性が気に入らん」

「お前が殴りかかってきたんじゃねーか」

正論だった。

が、慎二は気にしない。

「やはりここは紳士のスポーツ、剣道で勝負しようじゃないか。

  まさか衛宮さんともあろうお方が逃げないよな」

「まあ、気は進まないけど」

等と言いながら、士郎は『フッフフ』と不敵な笑いを漏らしている。

ちょっぴりアーチャーに似てきたかもしれない。

「しかしいつまでも昔のことを……お前はまったく子供だな」


































「チン毛以外は」


































プルプルプルプル……

慎二の体が震え始める。

そして。


































殺す!!


































士郎の抹殺を固く誓う慎二。

「なんかあやつわけもなく怒っておるぞ」

「きっと腹でも減ったんだろ」

ようやく起き上がったギルの言葉に、士郎は自覚のない答えを返した。

「しかし雑種貴様、剣道などやったことないであろう。勝てるのか」

「安心しろ、ギル」


































「遠坂のパンチを毎日受けている」



自慢にもならないことを自信満々に言う士郎。

それを聞いて、心配すべきかどうか真剣に迷うギルであった。






終。




あとがき



慎二(叶親役)登場。

アダ名とか正式名称考えるの楽しかったです。

勝負するスポーツは上手くハマるのがなかったので原作ままです。



40000ヒット用のSSです。
次回40000ヒット時には、ちょっとふぁて張はお休み。
MFLMNの番外編(第0話?)を書こうと思います。
セイバーがアーチャーに惚れるきっかけの話。





web拍手設置しました。



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