「金ぴか〜〜!!」

壮絶な闘死を遂げたギルの亡骸を抱えつつ、慎二が叫んだ。

「衛宮」

顔に影を落としつつ、慎二が士郎の名を静かに口にする。

「衛宮……!!」

周囲には慎二の怒りが、炎の幻影となって浮かびあがる。


「てめぇー血は何色だ!!」


顔を劇画調に変化させつつ、慎二が吼えた。

しかして、士郎の反応は。


















「赤……だけど」

やたら自然体の反応であった。



































冬木7

   『さらば慎二!!』

by楓野




「さて部活でござるな」

その時、剣道場に足を踏み入れたのはモブキャラ代表・後藤君。

「あっ」

その足が、慎二と士郎を見て一瞬止まった。

「間桐殿、何をやってるでござる」

「あっ、後藤。こいつを殺すんで剣道場使うよ」

親指で士郎を指差しながら慎二が言う。

『使わせてくれ』ではなく『使うよ』な辺りが慎二らしい。

念のために言っておくが、彼は弓道部である。

だが士郎を目にした後藤氏は、口を大きく開き、地に尻をついていた。

「で、でた『英霊』だ殺される」

震える声で呟きながら這ってその場を逃げようとする後藤氏。

「?おい後藤、『英霊』ってあいつは衛宮士郎だろ」

慎二のそんな声も届かず、後藤氏は『殺される〜殺される〜』とうわ言の様に繰り返すばかりである。

「殺されるって今から僕があいつを殺すんだぜ」

「間桐殿は『英霊』という人間をしらんようでござるな」

そう言うと、ようやく落ち着きを取り戻した後藤氏は訥々と語り始める。

(あやつはでござるな……)



パララリラパララララパァ〜〜〜〜!!!



深夜の公道を、バイクの集団が騒音と共に走り回る。

彼らの行く手を塞ぐものは何もなく、迷惑行為上等の暴走族。

その先頭を行く一人が、何かに気づく。

人影。

ライトを真正面から浴び、道路のド真ん中に立ち尽くしている一人の男。

ハチマキに耳当て、そして何よりも目立つのは『英霊』と大きく書かれたどてら。

当時高校受験真っ只中の衛宮士郎である。

士郎はなんら怯むことなく、暴走族の一団に向って突っ込んでいった。

「うるさいんじゃいボケ!!」

ダリャァ、と靴の裏でバイクに乗っていた一人の顔面を蹴り倒す。

「てめーらのせいで!!」

続けて別のバイクの運転手に向って、フライングクロスチョップ。

「受験勉強が!」

更にまた別のバイクの運転手の首に腕をかけ、

「できねーだろーが!!」

走行中のバイクからラリアットで引きずり倒して地面に叩きつけた。

こうして死人が出かねない方法で暴走族を停止させた士郎は、

「全員正座!!」

全員を路上に正座させたのだった。

「お前らはアホでやる事がないからって夜中にバイクで走り回るな。

 分数の掛け算ができるようになってからやれ」

数十人の暴走族(正座中)を前に、士郎が声を張り上げる。

「大体メットもかぶらないで転倒したらどうなるかわかってんのか?」

そこで士郎は足を止め、チラリと暴走族一同を見渡した。

「はい!そこの吉祥寺のことをジョージと呼んでそうなお前!答えろ!!」

早押しクイズの司会者の如く一人を指差す士郎。

「お、俺!?」

指された男はしどろもどろになりながら、

「けがします」

「ちがう!!」

と、冷や汗を流しながら答えるも、どうやら不正解だったらしい。



「こう!!」



ズゴ!!!!



士郎の頭突きが男のドタマに突き刺さった。

「ころぶ!!死ぬ!!わかった!シャチョさん!!

頭から盛大に流血した男の髪を掴んで、士郎は大声で解説する。

しかし、暴走族一同の心中はというと、

(なんで日本語がカタコトなんだろう…)

という至極もっともな疑問で埋め尽くされていた。

ちなみに、事故以前に士郎の頭突きで死にそうになっているのはご愛嬌。

「だいたいお前ら将来どうすんだよ」

何事もなかったかのように説教を続行する士郎。

「俺らは今がよければいいんだ」

誰もが冷や汗を流し目をそらす中、勇敢にも一人の男が士郎の問いに答えた。

「フッ」

だが、士郎はその返答に対し、鼻で笑った。

「今がよければいいのか。それなら……」

腕を組み、目を閉じてタメを作る士郎。

そして。

「野々村 真は『世界ふしぎ発見』が終ったらどうする!?」

カッ!と目を見開き、大音量で士郎が吠えた。

暴走族一同は、ガ――――ンという擬音が聞こえるくらいの勢いで衝撃を受けていた。

「だいぶわかってきたようだな……さらに……

 フランキー為谷は『東京フレンドパーク』終ったらどうする!?

今度は背後に雷鳴のエフェクトまで付いていた。

「『エンタの神様』が終ったらヒライケンジはどうする!!」

さらに追い討ちをかける士郎。

暴走族一同は、『やめてくれ〜』『考えたくない〜』と呻きながらのた打ち回っていた。

「お笑いブームが過ぎ去ったらたむらけんじはどうする!?」

最後にズビシィ!!と指を突きつけ、吠える士郎。

「だれ?たむらって」

「知らん」

暴走族一同は口々にざわめきあう。

どうやら誰一人思い出せないらしい。

「馬鹿どもめ、たむらけんじも知らんのか。

 バカが思い出すようにたむらけんじの『ちゃ〜』をやりまーす」

手を上げて、小学生のように宣言する士郎。

そして。













「ちゃ〜」













空気が、凍った。

暴走族一同はピクリとも動かない。

というか、反応の仕方がわからずに固まっていた。

微動だにしない士郎。

しかし、その額や頬は徐々に冷や汗にまみれていった。

―――そして、ついに士郎の理性が崩壊する。


「しずまるな〜!!」


『助けてくれ〜!』『こいつはおかしい〜!』という悲鳴をBGMに、

士郎は次々と暴走族を叩きのめしていくのだった――






「こうして暴走族は『英霊』と文字が入ったどてらを着た、たった一人の男に潰されたという話でござる」

後藤氏はなんだか遠い目をしながら解説を終えた。

だが、慎二はそれを聞いても不敵に笑うばかり。

「それほど衛宮は強いってわけかい」

「いかにも」

慎二の問いに、後藤氏は大仰に頷いた。

「後藤、衛宮が暴走族の一個くらい解散させたからってどうしたっていうんだい?

 僕が剣道であいつに負けるわけないじゃないか」

その自信がどこから出てくるのか、小一時間問い詰めたいもんである。

自信満々の慎二だが、それを尻目に士郎は防具を外し始めている。

「衛宮、どうして防具を取るんだ、逃げる気か?」

「慎二相手に防具は要らないだろ」

頭の手ぬぐいを外しながら、尤もなようなナメてるような士郎。

「なっ、なめやがって!!それなら僕も防具なんて要らないよ」

言いながら手荒く防具を取り外し始める慎二。

――それが、命取りとなる。

接近する異様な気配に、士郎のいた方へと顔を向ける慎二。

「ん?」

そして。




「ランサー直伝ゲイボルグ〜〜の突き〜〜!!!」






殺!!






士郎の情け容赦ない激烈な突きが慎二の喉元に突き刺さる。

その勢いは慎二の足を床から離れさせ、そのまま壁へと叩きつけられる。

ズルズルと崩れ落ちた慎二は、糸の切れた操り人形のように倒れ伏した。

「え、衛宮。ま、まだ試合は始まってないんだぞ……」

泡を吹き、体を痙攣させながら、慎二は掠れまくった声でようやっと口を開いた。

「すまん、あまりルールを知らないんだ」

慎二の枕元に片膝をついてその顔を覗き込む士郎。

「し、知らないって世間一般の常識でわかるだろ……」

だが、士郎に常識は通用しない。

というか、聖杯戦争に参加した面々は、慎二を除いて皆、常識が通用しないのである。

「やり直すか?」

「やり直すもなにも僕はもう死ぬかもしれないよ……」

見る見るうちに弱っていく慎二に、士郎は真剣に死体の処理を考え始めた。

が、不意に後ろに現れた気配に、士郎は思考を中断して振り返る。

「おおっ!!ギル、生きていたのか!!」

先程(前話参照)、士郎にKOされたギルが不死鳥のごとく復活していた。

さすがギャグキャラ。

後藤氏はというと、必死に慎二に呼びかけている。

「なんか俺、卑怯な手をつかっちゃったみたいだけどどっちの勝ちかな?」

『Winner!!』

士郎の口に出した疑問に、正体不明の猫っぽいナマモノが現れて勝利宣言をする。

ナマモノは勝利宣言だけしてあっという間に消え去っている。

「サンキュー、猫アルク」

しかも知り合いっぽかった。

「間桐殿……息してないでござるが……」

後藤氏は慎二を指差しながら恐る恐る口に出した。


『だっははははは!!!』


士郎とギルが声を揃えて爆笑する。

「面白い、今の間最高だぞ後藤!」

後藤氏の肩を軽く叩きながら言い、士郎は慎二の胸に耳を当てる。

「どれ?」

色んな意味で、微動だにしない慎二。

「し、心臓が止まってる」

涙ながらに言う士郎に、同じく涙を流す後藤氏が強く頷く。

「ギル!!いや、時南先生お願いします!!」

いつの間にやら作務衣に着替えてヒゲをつけたギルに士郎は振り向き、声をかけた。

ギルは無言で慎二の腕をとり、脈を見る。

そしてスクッと立ち上がり、

「時南宗玄、死亡確認」

『慎二〜〜〜〜〜〜〜!!!!』

ギルの死亡確認に、士郎と後藤氏の哀しい絶叫が木霊した。











〜〜その後、慎二は奇跡的に息を吹き返したという。

  (民明書房刊)『間桐天パ伝』より〜〜




あとがき



やったらめったら間が空きましたがごきげんよう。

そろそろこっちも更新せなとおもって書き上げました。


しばらく書いてなかったのでギャグが弱いです。

ジャンポスト→猫アルク、王大人→時南宗玄という変換はTYPE-MOONキャラで他に適当なのがいなかったからです。

怪しい生物と胡散臭い医者、ですね。


いい加減にMFLMKの第0話も書かねばなりませんね。

外伝も書いてないし。


セイバーとファミコンという変な話も書きたいですし。

何はともあれ、まだサイトは続けるんでこれからもよろしくお願いします。




web拍手です。



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