「そう気を落とすなって、坊主。

  どうせなら楽しまにゃソンってもんだぜ?」

公道をひた走る車の中。

楽しそうに笑うランサーが、俺の肩をぽすぽすと叩く。

「別にとって食おうって言ってるわけじゃねえんだ。

  たまにはセイバー達のお守りから離れるってのもいいんじゃねえか?」

いきなり拉致られた俺の身にもなってください、兄貴。

とはいえ、ランサーの言う事にも一理ある。

この所、遠坂と桜が妙に衝突するせいで、

俺の気の休まる時は以前に比べて目下減少中。

セイバーの美食家ぶりにもどんどこ磨きがかかってきてるし、

ここらで骨休めしたいなあと思っていたのも事実だった。








……あれ?もしかしてあんまり気に病む必要なかったりするんじゃ?
















ふぁて遊記

3.『追跡部隊結成(我らは猟犬。でもエサには弱いのです)


















時間は少し戻って四人が柳洞寺の石段前に到着した頃。


「ただいまー。士郎、お茶ー!」

帰ってくるなりお茶を要求する我らがチャンプ、遠坂凛。

靴を脱いで廊下に上がり、居間の戸を開けると―――――




















「えらいことですえらいことですえらいことですえらいことですえらいことです」

「どうするんですかどうするんですかどうするんですかどうするんですか」




















……なんか奇妙に呟きつつ居間を走り回るセイバーとライダーがいたのだった。

「……なにやってんのアンタ達?」

やなモン見た、と言わんばかりに目を覆う凛。

「リリリリリリリリリリン!えええええええええらいことになりました!!」

「ええい、落ち着け!」

かつてないくらいに動揺しているセイバーを一喝して、ライダーのほうに向き直る。

「一体なにがあったのよ?」

「なにはともあれこれをご覧ください」

ライダーが差し出すのは、つらつらと文字が書かれた一枚の紙。

アーチャーが書いたのだろう、小奇麗に揃った文字は筆ペンで書かれている。



『バカ二人と旅に出る。探さないでくれたまへ。』



どう見ても書置きだった。

ご丁寧に、書いた日時までが秒単位で記されている。

「……なにコレ」

「はあ、そのままの意味なのですが」

どう補足していいかわからずに、間の抜けた声を返すライダー。

「リン!その下です下!」

「下?」



『追伸。衛宮士郎も拉致って連れて行くんで宜しく。 アーチャー』



「ななななななななに考えてんのよあの家政婦サーヴァントは!」

怒りに任せてアーチャーの書置きをぐしゃりと握りつぶす。

「士郎とアーチャーが一緒にいたら即殺しあう……まで行かないかもしれないけど、

  お互い衝突するのなんて目に見えてるじゃない!!」

「しかも同行するのがあのギルガメッシュとランサーでは抑止効果は見込めませんね」

「な!?ではシロウの命は風前の灯ではないですか!」

セイバーが思わず武装して飛び出そうとするのを、凛とライダーが必死にしがみついて押さえる。

「は、はなしなさいライダー!このままではシロウの命、ひいてはあの美味しいご飯が!

「だから落ち着きなさいセイバー!今飛び出したところで探すあてもないでしょうが!」

「はっ!そ、そうでした。申し訳ありませんお二人とも。つい熱くなってしまいました」

少々顔を赤くしながら武装を解くセイバー。

ついでになんかラクガキっぽい姿になってしゅ〜ん、と正座する。

「とはいえ、放置しておくわけにはいかないわよね」

「そうです!ランサーとギルガメッシュはわりとどうでもいいとして、

  アーチャーと士郎は早急に連れ戻さねばなりません!」

凛の発言に、力強く頷くセイバー。

もっとも、その心は


『あの二人がいなければ私の日々の食生活が貧しくなるではないですか!』


というやたら即物的なものではあったが。

「よし!作戦練るわよ!」

「はい!」

意気揚々とテーブルに着く凛とセイバー。

それを見ながら、『桜が帰ってくるまでは傍観を決め込もう』と決心するライダーさんなのであった。



時は夕刻。

空は茜色に染まり、人々は家路に着く。

「あれ?サクラ?」

「あ、イリヤさん」

二人が出会ったのは、ちょうど衛宮邸のどまん前。

「いつもの部活か。サクラも大変よね」

「あはは。もう慣れちゃいました」

会話しながら、玄関をくぐる。

靴を脱ぎ、廊下に上がり、居間の戸をあけると。


「ひっ……!」


物凄い目をしたあくまと獅子が、こちらを睨みつけているのだった……!

後にイリヤは語る。

『あれはキッ!とかカッ!なんてもんじゃないわ。ギヌロ!ギヌロ!ちょっとちびっちゃったんだから……



居間は、一種異様な空間と化していた。

食卓の上には何枚もの書類が散乱し、凛とセイバーの横にはペットボトルのお茶。

何処から持ち込んだのかホワイトボードまである。

そして、何故かライダーの前には一升瓶。

「え、えーと……なにやってるんですか、姉さん?」

「緊急事態なのよ、桜」

「詳しくはこちらの書置きを」

立ち上がったライダーが握りつぶされてシワシワになった書置きを差し出す。

一見普段どおりに見えるが、やたらと酒臭い。

テーブルに鎮座する一升瓶とコップ、重ねられた空き皿からして、相当飲んでいるのだろう。

もっとも、飲まなければ凛とセイバーのテンションについていけなかっただけかもしれないが。

酒の臭いにちょっと顔をしかめつつも書置きを受け取って読み進める桜。

「えーっと……って先輩が!?」

「あーあ。士郎も大変よね」

クワッ!と目を見開く桜と、わりと他人事そうなイリヤ。

「状況はわかりましたけど。姉さん達がなにをやっているのかはまだちょっと」

「決まってるじゃない!四バカ追討部隊結成会議よ!

ばばーん!とド派手な効果音をつけて、ホワイトボードを叩く凛。

ぱちぱちぱちと拍手を送るセイバー。

そしていつの間にか士郎とアーチャーもバカの仲間入りを果たしていた。

「はあ……」

「現メンバーは私とセイバー。ライダーはアンタが行くなら行くって言ってるわ。

  イリヤも入って欲しいけど、できればスポンサーにもなって欲しいわね」

ものすっげぇ赤気おーらを背負って言う凛様。

その勢いに桜はたじろぎ、イリヤは乗った。

「はいはーい!私行くー!もちろん、旅費やらなんやら全部私が工面してあげるわ」

「い、イリヤさん!?」

「いつまでも冬木だけじゃつまらないもの。たまには外を見に行ってみるべきだわ」

そう言って、くるくると楽しそうにステップを踏むイリヤ。

窓の外では、バーサーカーがそれを微笑ましそうに見つめている。

多分、同行する気マンマンだ。

「それで、どうするの桜?私たちと一緒に行く?それとも留守番してる?」

「えーと……その、お留守番してようかな、と……」

歯切れの悪い桜に、ライダーが手を上げて発言する。

「サクラ、旅の途中で士郎が新たな恋に目覚めるという可能性も」

「行きます」(←シークタイム0.00001秒)

ものすっげえ即答だった。

いつにない気迫……というか黒陰気おーらに、凛がちょっとだけビビってあとずさった。

「ふふふ……先輩に近づく雌犬は食べちゃってもいいんですよね神様?

  くすくすとわらってごーごーですよね?くうくうお腹もなりそうですフフフ……」

なにか脳内神から妙な電波を受信しはじめる桜。

マジ怖い。

「あー……壊れた桜は放っておいて。

ここに、四バカ追討部隊を正式に結成するわ……!!」

拳を突き上げ高らかに宣言する追討部隊隊長。

そしてわーわーと歓声に包まれる衛宮邸。

前祝いと称して秘蔵の日本酒を浴びるように飲む凛とライダー。

同様に、とっておきのお菓子にかぶりつくイリヤとセイバー。

いよいよ脳内神を召喚する勢いの桜。

しかし。

どうやって追いかけるかという最重要項目には誰一人として気づいていないのであった―――!
























衛宮邸が無意味かつ早計に盛り上がっている頃。

吹っ切れた士郎を含む四バカ一同は―――


















「お、やっぱり味がよくなったってのはホントだな」

「ふむ。この王の舌を満足させるとは褒めてやろう」

「よっしゃ!アーチャーイッキいけ!」

「いいだろう。この身には、只の一度も逆流はない―――!」


『イッキ!イッキ!イッキ!イッキ!』


新都の居酒屋で、果て無き宴会を繰り広げているのであった。



どっちもどっち。





あとがき

追討部隊、結成!

イッキは危ないので英霊でもなければやめておくのが賢明です。





感想なんかありましたらどうぞ。



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