「あー……っつ……」

目を覚ますと、そこはホテルの一室らしき部屋だった。

床に大の字で寝っ転がって寝ていたらしく、肩やら首が少し痛い。

頭に残る鈍痛を気にしつつ、ゆっくりと身を起こしてみる。

「ん、大丈夫そうだな」

肩や首をぐるぐる回してみると、それほどだるいわけでもなかった。

軽い頭痛はまだ残っているが、動けないほどじゃない。

「起きたか、坊主」

声をかけられて後ろを振り向くと、ソファにもたれかかったランサーの姿があった―――。


















ふぁて遊記

4.『宴のアト(飲む阿呆に吐く阿呆。どうせ阿呆なら吐かにゃ損……じゃないな、うん)


















「ランサー。悪い、起こしたか?」

「ほんの少し前に起きたばっかだ。もう昼だしな」

言われて時計を見ると、十二時を少し過ぎた辺り。

「坊主、動けるか?」

「少し頭痛はするけどたいしたもんじゃない。そっちは?」

「悪ぃ、しばらく動けそうにねえわ。頭痛くて仕方ねえ……」

あんだけ飲めば当たり前だ。

と、ツッコミたいが二日酔いの人間にそれは酷なのでぐっとこらえる優しい俺。



大体常軌を逸してるぞ、あの宴会。

昨日の夕方、ちょうど新都に差し掛かった辺りでギルガメッシュが、

『どうだ、貴様ら。旅の無事を祈って飲みに行かぬか?

  支払いは気にするな、王の施しというやつだ』

なんて言い出したのがそもそもの始まり。

そこから適当なホテルを探して、ツイン二部屋を取ってチェックイン。

ホテルの駐車場にジープを置いて、徒歩で新都の飲み屋街へ。

前々から評判になっていた店に陣取って、乾杯をしたのが確か六時ごろ。

最初はそれほどでもなかったのに、いつの間にかペースが上がる上がる。

まあ、俺は無理強いされることもなかったしセーブして飲んでたから平気だったんだけど。

アーチャーのイッキ連発や、ギルガメッシュの『我の酒が飲めぬのかー』発言を経て、

飲み続けること六時間、四人で飲み代16万。

しかもそのままホテルに帰るのかと思ったら、

ランサーの『なぁ、歌いたくね?』発言によってカラオケに突入。

アーチャーはともかく、ランサーやギルガメッシュが最近の歌を知っているのには驚いた。

意外に上手かったし。

その後、ランサーの『Winter,again』に惚れそうになったり、

ギルガメッシュが『WHITE BREATH』の本人映像に合わせてカンペキなフリつきで熱唱したり、

アーチャーが切々と歌う『昭和枯れススキ』に涙したり、

『One Night Carnival』を全員でノリノリシャウトしたり、

ネタに走ったりカッコつけたり洋楽邦楽入り乱れたり。

まあ色々ありながら、フリータイム終了まで全員フルパワーで熱唱。

全員フラフラになりながらホテルに帰り着き、結局全員同じ部屋になだれ込んだ挙句、

寝場所すらもろくに決めずにそのまま倒れるように寝入ってしまった。

そして現在に至るというわけだ。



「あー……久々に飲みすぎたぜ」

ランサーが天井を見上げながらぼやく。

さすがにカラオケが効いているらしく、声がちょっとガラガラだ。

「ギルガメッシュはどうした?」

部屋に着くや否や『我はべっどでなければねられぬのだー』と殆どひらがなで言って、

ベッドにダイビングしていた様な記憶があるんだけど。

「多分、ベッドとベッドの間に落っこちてる」

ランサーの言葉どおり、ギルガメッシュはベッドの間の隙間にすっぽり納まっていた。

「……なぁ、なんでコイツこんなになってんだ?」

「寝相悪ィんだよソイツ。

  普段はキングサイズのダブルベッドで寝てるくせに朝になると隅っこにいるからな。

  一度なんか、落ちるか落ちないかのギリギリのバランス保って寝てたぞ」

そりゃまたなんというか、物凄い寝相だ。

というか見てみたいぞ、そのギリギリのバランスで寝てるトコ。

「で、アーチャーは?」

「いや俺も見てねえ。アイツ、俺が起きたときにはもういなかったぜ」

「?アイツ、この部屋で寝たよな?」

念のため、隣の部屋まで行って覗いてみるが誰も居ない。

「何処いったんだアイツ?」

「案外、平気なツラして買い物にでも行ったんじゃねえか?」

「それなら書置きくらい残すような気がするんだよな……」

なんとなく気になって、部屋の中を探し始める。

机の下、いない。

ベッドの下、いない。

ソファの裏、いない。

「なんでそんな妙なトコばっか探すんだ?

普通バスルームとかじゃねえのか?」

「あ、そうか」

さっぱりしようとシャワーでも浴びてるのかもしれない。

なにしろ風呂に入る気力も体力もなくぶっ倒れたもんなぁ。

「アーチャー、いるか?」

バスルームに続くドアをノックしてみる。

……返答なし。

一応、ノブを回してみる。



ガチャ。



「鍵、開いてる?」

ドアノブは何かに引っかかる気配もなくすんなりと動く。

ま、入っても大丈夫だろ……と足を踏み入れた瞬間。




































顔を真っ青にして白目を剥き、便器に突っ伏すアーチャーの姿があった。


「地獄絵図ーーーーーーーーー!?」


「なんだなにがあった!?」

思わず叫んだ俺の声に、ランサーがドタバタと駆けてくる。

「うお!?屍かコレ!?」

「ンなわけあるか!!多分リバースした後に失神したんだ!」

一応便座は戻したらしく、蓋の上に突っ伏す格好になっている。

床は……汚れてない、よかった!!

さすがに正義の味方でもゲ○の掃除はイヤなものなのです。

「おいアーチャー、しっかりしろ!!」

「む……」

俺が体を揺すると何とか反応する。

とりあえず生きてはいるらしい。

「大丈夫かよ?」

「う……




































……ケミカルウォッシュだよTo坂。俺も、これからウォンチュっていくから……フフフ……」




「バグってるーーーーー!!」



「感動台無しだなオイ!!」


なんか視神経までバグって妖精さんとか見えていそうな感じだ。


白目剥いてるけど。


「……ランサー、コイツ運べるか?」

「いや、無理」

速攻で否定されました。

まあランサーも二日酔いだしなぁ。

……仕方ない。




































「放っとこう」



「そうしよう」


これ以上被害は拡大しないだろってことで、

俺とランサーは何も見なかったことにするのだった。

そしてソファに戻るなり、

「……腹減ったな」

「あー、確かに」

と、二人して腹の虫が騒いだのだった。

俺もランサーも吐き気はないから、腹が減ってもおかしくはない。

「なんか買って来るか……」

「悪い、坊主……さっき動いたせいでよけい頭痛くなってきやがった」

「いいさ。ゆっくり休んでろよ」

「金は、ギルの財布ごと持ってけや」

今だベッドの間にハマっているギルに目をやる。

あんだけ騒いだのにギルガメッシュはまだ寝ていた。

ライダースーツのポケットから財布を抜き取り、俺のポケットに移す。

「んじゃ、行って来る」

「おう」

バタン、と部屋のドアを閉めて、最寄のコンビニの場所を思い出す。

ついでに、もう一泊する旨を伝えてくるかとフロントに立ち寄るのだった。




ちなみにその頃、衛宮邸では。

「頭痛い〜気持ち悪い〜まだ目が回る〜……」

「うあうあうあう……」

生きる屍と化した凛とライダーの姿と、

「まったく、なにをやっているのですか二人とも……」

「ホントよねー」

冷ややかにそれを見つめるセイバーとイリヤ、

「えーと、お水に洗面器に……あ、味噌汁が効くんですよね?」

そして脳内神の電波も抜け、甲斐甲斐しく二人の世話をする桜の姿があったのだった。

「でも、リンはともかくライダーも二日酔いになるのね」

「ええ。私も意外でした。蛇というからにはてっきりウワバミなのかと」

セイバーとイリヤが寝込むライダーに視線を向ける。

そのライダーはというと。

「ああ上姉さま、ジャイアントスイングしながらの吸血というのは非常に前衛的だと思いますが、

  ひゃあいたたたた!!歯が!歯が遠心力でズルって!」

体に残ったアルコールがいい感じでキマってしまい、妙な悪夢を見ていたのだった。

どうも悪夢の中では、二人の姉はめっちゃパワフリャになっているようだ。

「ひい、下姉さま!すねは!すねは痛いです!ていうか骨に!骨に歯がサクっと!」

しかも寝言が妙にハッキリしている上に異様にうるさい。

「あああ上姉さま、下姉さま!そこは!そこは吸わないで下さい!

  せめて胸から!それがだめならお尻からでもいいですから!

  そこは、そこだけはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

段々艶を帯びてくる声。

もしかしたら自身の淫夢を見せる能力が暴走しているのだろうか。

「……どこから吸われてるのかしらね」

「……というよりもどんな夢を見ているのでしょうか」

ハタから聞いていると理解不能な夢であった。

「はぁ、こうしている間にも士郎達は遠ざかっていくのでしょうね」

実はまだ新都のホテルで潰れているとも知らず、セイバーが嘆息する。

「はーあ、退屈だし、サクラでも手伝ってくるわ」

「私も行きましょう」

溜息をつきながら部屋を出て行くセイバーとイリヤ。


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」



「ライダー、うっさい!!」



二人の回復は、まだ遠そうであった。





あとがき

もはや凛もオチとして定着しつつあります。

あと、回を追うごとにアーチャーがボケに、士郎がツッコミに。

ホントはアーチャーがツッコミ役で他三人が色々ボケる予定だったのになぁ。

まあでも面白いからオールOK。





感想なんかありましたらどうぞ。



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