「……アサシン、いる?」

ぞろぞろと後ろにお供を従えて、凛が誰もいない山門に声を投げかける。

だが、何一つ答えは返ってこない。

「ちょっとアサ次郎!出てきなさいよ!」

「……誰がアサ次郎か」

苛立ったイリヤの声に、表情を不機嫌そうに硬化させた小次郎が浮き出るように現れた。

「ほう、一輪かと思えば絢爛の花束であったか」

凛の後ろに居並ぶセイバーやライダー、桜を眺めて口元で笑う。

「して、何用か。こう見えても衆目に姿を晒すなと女狐に言われていてな。

 出来るだけ手短に頼みたい」

涼やかな薄い笑みと声で小次郎は問う。

それに対し、凛が一歩踏み込んで立てた人差し指を突きつけた。

「訊きたいことは一つだけよ」

まばたきよりも少し長い時間目を閉じ、開くと同時に強い意志を乗せて小次郎を見据える。

「あの四バカ、どこにいったの?」


















ふぁて遊記

7.『尋問(綺麗なお姉さんにイロイロ訊かれたいですか?)


















「さて。四馬鹿と言われても誰のことやら見当もつかぬな」

凛の視線になんら臆することもなく、小次郎はうそぶいた。

四バカが誰を指すかはわかっている。

しかし、ランサーから酒を受け取った手前、

何の益にもならないわずかな時間でも稼ごうという小次郎の心意気である。

ついでに言うと、本心を隠すのはキャスターの相手で慣れていた。

「士郎とアーチャー、それにランサーと金ぴかよ」

ここで激昂しては聞きだせるものも聞きだせない。

そう判断した凛は冷静に四バカの意味する者の名を口にした。

「ふむ――」

すでに知っていた事柄を初めて耳にしたかのように小次郎は目を閉じ、考え込むふりをする。

決して不自然にならぬよう、かつ出来るだけ長く引き伸ばして口を開く。

「――見たわけではないが心当たりならある」

「それはどこですか」

セイバーが真っ直ぐに小次郎を見据えている。

それを騙すことにほんのわずかな罪悪感を抱いたものの、

それを顔には出さずに小次郎はまた口を開く。

「先日、槍兵がここを訪れてな。あやつの故郷を見に行くと聞いた。

 私も行かぬかと誘われたが、生憎この山門に縛られる身。

 女狐を説得するとも持ちかけられたが、丁重に断った」

無論、誘い云々は虚言である。

ランサーがここを訪れたことを不自然に思わせぬためのデタラメだ。

小次郎という男、学こそ乏しいもののなかなか機転の利く男であった。

「本当でしょうね」

「さて、真偽を問われても如何とも言えぬ。彼奴らとて時には気まぐれもあろうよ」

ジト目を送る凛を笑みで受け流し、曖昧に濁す。

疑問を持たれようともこれでは小次郎の言葉に頼る他ない。

「……わかったわ。ありがと、アサシン」

「昨今は物騒ゆえ、道中、気を抜かぬことだ」

礼を言って踵を返す凛。

他のメンバーもその後に続いた。

「どうしますか?姉さん」

「……どうも信用しきれないのよ」

桜の問いに、考え込みながら石段を下る凛。

「とは言っても、もしも本当だったら早くしないといけないし……」

それっきり、口をつぐんだまま黙々と足を動かす。

そして、石段を下りきったところで凛は顔を上げた。

「空港に行ってみましょう。

 裏が取れればそれでよし、そうでなければ――」

そこで凛は言葉を切った。

だが、皆、凛が言わんとするところは判っている。

もしも嘘をついていたのなら、小次郎に地獄を見てもらうことになる――と。



そして向かった最寄りの空港。

「――妙な四人連れ?」

「ええ、外人が三人と赤い髪の学生が一人なんですが」

空港の職員に聞き込みを始める凛。

アーチャーは本来日本人だが、外見が日本人離れしているので外人と説明。

そして士郎の特徴といえば赤い髪である。

だが、しばらく考え込んだ後に空港の職員は首を振った。

「いや、見てないね。そんな目立つ一行なら覚えてるはずだよ」

「そうですか」

職員に謝辞を述べ、凛はその場を離れた。

「どうだった?」

「見てないそうよ」

外見上の理由から待機していたイリヤに凛が報告する。

そこに、同じく聞き込みに行っていたライダーと桜が小走りに駆け寄ってきた。

「どう?」

「目撃情報はありませんでしたね。

 念のため調べてもらいましたが、やはりここには来ていないようです」

「……となると」

ギラン、と全員の目が獣の輝きを宿した。

そして。



『小次郎ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』



声を揃えて絶叫し、ものすごいスピードで駆け出した。

後に空港の職員は語る。

『まるで大移動するヌーの大群のような足音だった』と。



「くたばれ小次郎ぉぉぉぉぉ!!!」

「がふっ!!」

石段を登りきるなり放った凛のガンドが、小次郎の即頭部を直撃した。

涼やかな笑みを浮かべ、ほとんど直立したまま吹っ飛ぶ小次郎。

「よくも謀ってくれたわねアサ次郎……!!」

「嘘八百を並べ立てるとは許しがたい!去勢しましょう、リン」

燃え盛るほどの赤気オーラを立ち上らせる凛と、真顔ですげぇこと言うセイバー。

「ふむ、思いの外早かったな。やはり人を謀るのは女狐の専売か」

「ふざけないで!」

起き上がって尚飄々としている小次郎を、イリヤが眉を吊り上げて睨む。

「そう怒るな。これも男の付き合い、許せ」

『許せるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

絶叫して思い思いに攻撃準備に入る追撃部隊一同。

凛は指の間に六個の宝石を挟み、セイバーは目に見えぬ剣を強く握り締める。

イリヤはバーサーカーを具現化させる気マンマンだし、桜はすでに黒化していた。

周囲が殺気立つというかSATUGAIモードに入っている中、

ライダーだけが冷静に小次郎の前に躍り出る。

「……失礼」

そう呟くと同時、ライダーの腕が小次郎の襟首を引っ掴んだ。

そのまま力任せに小次郎を倒し、彼を引きずって茂みの方へと足を向ける。

「リン、ここは私に任せてください。

 ――ええ、完膚なきまでに尋問してみせますから」

言いながら流し目を送るライダー。

その目になんというか淫靡な火が灯っている気がして、全員引いた。

端的に言うと、食われそうだった。

性的にも物理的にも。

「では小次郎、こちらへ。ちなみに拒否権はありません」

小次郎を引きずって茂みの奥へと消えるライダー。

背中を下にして引きずられているので、小次郎は刀を抜くことも出来ない。

さらに、筋力Bプラス怪力スキル持ちのライダーに筋力Cの小次郎が力で敵うはずもなかった。

二言三言口で抵抗はしたようだが、それで何が変わるわけでもない。

そして二人の姿が完全に見えなくなってからしばらく後。


『さあ小次郎。存分に楽しませてあげましょう』

『待て。このような趣向は趣味では――』

『知ったことではありません』


むちゃくちゃ楽しそうなライダーの声と、微妙に切羽詰った小次郎の声がかすかに届いてきた。


『差し当たって、このようなことは』

『ぬ……』

『いつまで耐えていられますか?』


一体ライダーが何をしているのかはわからない。


『ふふふ……元気がいいですね、小次郎』

『ま、待て……』

『何を言いますか。まだまだ序の口です』


ただ、段々声が艶を帯びてきているというか。


『ああ、こちらが好みですか』

『違う!まて、そこは違う!』

『嫌よ嫌よも好きのうちといいますし』


ぶっちゃけ、エロかった。


『ふぅ……そろそろ本気でいきましょうか』

『これ以上されたら死んでしまいます女王様!!』

『そこからが本番です』


すでに調教されたっぽかった。


『おや、このようなところにミニキャロットが』

『そ、それは人参ではなァァァァァァァ!!?』

『――美味ですね』


そんなやり取りを数十分ほど続けた後に。

「ただいま戻りました」

小次郎を引きずったライダーが、茂みの奥から帰還した。

「……おお……お……」

ミイラのごとき瀕死の状態で意味を成さない呻き声を上げる小次郎。

干からびて美形が台無しである。

ライダーが襟首を掴んだ手を離すと、とさっ、というやけに軽い音と共に小次郎が仰向けに倒れた。

「……何をやってたのかはあえて聞かないわ」

そう言う凛の……というか桜を除いた全員の顔は赤かった。

桜のみが平然としているのは、無論、慣れの問題である。

「ここまでやって吐かないと言う事は、本当に行き先は知らなかったようですね」

行く前に比べて微妙に膨らんだ感のある腹をさすりながらライダーが言う。

何を腹に入れたのかは知らない方がいい。

「そうなると手がかりは何もなしか……」

「いっそセイバーの直感に頼ってみる?」

口元を隠して考え込む凛にイリヤが思いつきで提案する。

「……微妙」

「微妙とはなんですか微妙とは!」

半眼で拒否した凛にセイバーがツッコむ。

それを華麗にスルーして凛が口を開く。

「しょうがない。バゼットに頼んで探査のルーンがついた品物を売ってもらいましょ」

心底気が進まなさそうに眉をしかめる凛。

その横ではセイバーがしゃがみこんで、たまたま歩いていた黒アリを突っついていた。

拗ねたらしい。

「最初からそうすればよかったんじゃないですか?」

桜が首を傾げながら問いかけると、凛は首を横に振った。

「お金かかるからなるべくやりたくなかったのよ」

「……リン、それくらい私が出すわよ?」

イリヤの呆れたような一言。

それに、凛の体は敏感に反応し、硬直した。



「ヘタこいたーーーーーーー!!!!!」


『アホーーーーーーーーーー!!!!!』



その場にくずおれ、orz ←こんな感じになる凛。

それと同時に四人分のツッコミが唱和し、周辺の鳥類は一斉に飛び立ったそうな。



ちなみにライダーによって瀕死の状態にされた小次郎だが。

帰宅した宗一郎によってメディアの元に担ぎこまれ、治療を受けた結果、

後遺症(主にメディアが原因)を残しつつも、何とか快方に向かっているという。



――最も、四バカと追討部隊はそのことを知ろうともしなかったのであるが。





あとがき

久しぶりです。

まあいくら小次郎でも女性陣に敵うわけはないわけで。

ライダーに何をされたのかは……まあ各自脳内補完。

一応答えはあるけど、多分その方が楽しい。


今回特に裏話的なものはないんですよね。

小次郎も割と書いてるせいか慣れてきました。

今思ったんですがついて来てるのに霊体化してて描写もないバーサーカーが哀れ。

多分、後々セリフあるからまあよし。


次回は四バカ東京進出です。

東京のどこに行くのかは……割とベタ。

ヒント:楓野は東京行った時は○○○○○しか見て回ってないです。


答えがわかっても拍手には書き込まないでね♪

書かれてるとレスできなくなってしまうので。




感想とかありましたらどうぞ。



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